給湯器の分野で国内屈指のシェアを誇るノーリツが、大きな経営の舵を切りました。2019年11月27日、同社はシステムバスや洗面化粧台といった住設システム分野の生産および開発から撤退することを明らかにしています。1988年の参入以来、私たちの暮らしを彩ってきた事業からの撤退は、業界内に大きな衝撃を与えました。
今回の決断に伴い、ノーリツは全社員の約2割に相当する600人の希望退職者を募集します。これは同社にとって過去に例のない初めての試みであり、事態の深刻さがうかがえるでしょう。SNS上では「お風呂といえばノーリツだったのに」と惜しむ声が上がる一方で、「生き残るためには仕方のない決断だ」といった冷静な分析も目立っています。
収益構造の改革と主力事業への集中
撤退の背景には、競合他社の台頭による採算の悪化があります。住設システム分野は2018年12月期において、全体の売上高の5.5%を占める115億円を記録していましたが、激しい価格競争の中で利益を出すことが難しくなっていました。そのため、2020年6月末をもって生産を終了し、今後は強みを持つ温水機器や厨房機器へ経営資源を集中させます。
経営のスリム化を図るため、生産拠点である子会社「アールビー」のキッチンライフ事業所の譲渡も検討されています。ここで「構造改革費」という言葉に注目しましょう。これは事業の立て直しのために一時的に発生する費用のことで、2020年12月期には約70億円の特別損失が計上される見通しです。痛みを伴う改革ですが、これは将来の成長に向けた布石といえます。
希望退職の対象となるのは、2020年3月20日時点で45歳以上の正社員や契約社員の方々です。退職金に加えて特別な加算金が支給されるほか、再就職支援も手厚く行われる予定となっています。人生の節目を迎える社員への配慮を見せつつも、人件費の削減によって固定費を圧縮し、身軽な経営体質への脱却を目指すノーリツの本気度が伝わってきます。
逆風の中国市場と経営陣の覚悟
直近の業績に目を向けると、2019年1月から9月期の連結決算では、最終損益が7億1400万円の赤字に転落しました。特に海外戦略の柱であった中国市場での苦戦が響いており、国内外で厳しい局面が続いています。これを受け、国井総一郎社長をはじめとする役員は報酬の減額や賞与の返上を決め、経営責任を明確にする姿勢を打ち出しました。
編集者の視点から言えば、この撤退劇は単なる縮小ではなく「勝てる戦場」を見極めるための勇気ある撤退だと評価すべきでしょう。多角化が進みすぎた事業を見直し、原点である「お湯」の価値を追求する姿勢こそ、今のノーリツに求められています。ブランド力があるからこそ、この危機を乗り越えた先にある新しい製品展開に、多くのユーザーが期待を寄せているはずです。
コメント