国内旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が、大きな経営の舵を切りました。同社は2019年07月10日、不動産やホテル事業を幅広く手掛けるユニゾホールディングスに対し、株式公開買い付け、いわゆる「TOB」を実施すると大々的に発表したのです。このニュースは投資家や旅行業界関係者の間で瞬く間に広がり、今後の展開に熱い視線が注がれています。
今回のTOBでは、ユニゾホールディングスの発行済み株式の45%を保有することを目指しており、投資額は最大で427億円にものぼる見込みです。ここで注目すべき「TOB(Take Over Bid)」とは、あらかじめ買い付け期間や価格、株数を公告し、不特定多数の株主から市場を通さずに株式を買い集める手法を指します。いわば、企業の支配権を握るための真っ向勝負と言えるでしょう。
HISがこれほどの大勝負に出た背景には、主力である旅行事業の収益力低下という切実な課題が存在します。格安航空券の普及やネット予約の台頭により、従来のモデルだけでは利益を維持することが難しくなりました。そこで同社は、自社で宿泊施設を運営する「ホテル事業」を第二の収益の柱として育て上げ、構造改革を成し遂げようと決断したのではないでしょうか。
しかし、この買収劇は一筋縄ではいかない様相を呈しています。ユニゾ側は今回の提案に対し「一方的な通告である」と強い不快感を露わにしており、経営陣の合意を得ない「敵対的買収」へと発展する可能性が濃厚となりました。SNS上でも「HISの強気な姿勢に驚いた」という声や、「老舗ホテルチェーンの行方が心配だ」といった、期待と不安が入り混じった投稿が相次いでいます。
不動産価値とシナジー効果の行方
編集者の視点から見れば、HISの澤田秀河会長兼社長が持つ、ハウステンボスを再生させた際の手腕が再び振るわれるのかが最大の焦点です。ユニゾは都心の好立地にオフィスビルやホテルを多数保有しており、その資産価値は極めて魅力的だと言えます。HISの集客力とユニゾの優良資産が組み合わされば、これまでにない新しい滞在体験を提供できるはずだと確信しています。
一方で、敵対的な手法は対象企業の従業員や既存顧客に心理的な抵抗感を生むリスクも孕んでいます。強引な統合が進めば、サービスの質が低下しかねないという懸念は拭い去れません。単なる数字上の買収に留まらず、いかに両社のブランド価値を損なわずに融和を図れるかが、この壮大なプロジェクトの成否を分ける分岐点になるに違いありません。
2019年07月11日現在、株式市場ではユニゾの株価が急騰するなど、この買収提案に対する期待値の高さが数字として表れています。HISが掲げる「ホテル事業への活路」が、停滞する旅行業界にどのような新風を吹き込むのでしょうか。今後、ユニゾ側がどのような防衛策を講じるのか、あるいはホワイトナイトと呼ばれる支援者が現れるのか、一分一秒を争う攻防から目が離せません。
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