給湯機器の国内大手として知られるノーリツが、大きな経営の舵を切りました。2019年12月4日、同社はシステムバスや洗面化粧台といった住設システム分野の生産・開発から撤退することを発表したのです。1988年の参入以来、私たちの暮らしを彩ってきた製品群が姿を消すというニュースは、業界内だけでなくSNSでも「実家の風呂がノーリツだったから寂しい」「時代の流れを感じる」といった惜しむ声が広がっています。
今回の決断の背景には、激化する市場競争と採算性の悪化があります。住設システム分野は住宅の「顔」とも言える重要な領域ですが、競合他社とのシェア争いが激しく、2018年12月期の売上高は全体のわずか5.5%にとどまっていました。経営資源を分散させるのではなく、強みを持つ温水機器や厨房機器へ集中させる「選択と集中」は、企業が生き残るための苦渋かつ賢明な判断だと言えるでしょう。
600人の希望退職と経営陣の覚悟
事業撤退に伴い、ノーリツは全社員の約2割に相当する600人の希望退職者を募集します。同社にとって初となるこの施策は、2020年3月20日時点で45歳以上の正社員や契約社員が対象です。SNS上では「45歳以上が対象なのは厳しい現実だ」という反応がある一方で、退職金への特別加算金や再就職支援が用意されており、企業としての誠実な対応を評価する意見も見受けられます。
経営責任を明確にする姿勢も鮮明です。国井総一郎社長をはじめとする役員陣は、月額報酬の減額や賞与の返上を決定しました。2019年1月〜9月期の連結決算で7億円を超える最終赤字を計上した現状を打破するため、身を切る改革に乗り出しています。こうしたトップの姿勢は、残る社員にとっても再起への強いメッセージとなるはずです。
2020年6月の生産終了に向けた構造改革
今後のスケジュールとして、2020年6月末には住設システムの生産が終了する予定となっています。生産拠点であるアールビーのキッチンライフ事業所の譲渡検討も含め、2020年12月期には約70億円の特別損失を見込んでいます。一時的な痛みは避けられませんが、赤字事業を切り離すことで、主力である給湯器分野でのイノベーション加速が期待されます。
編集者の視点として、今回の撤退は決して「敗北」ではなく、令和の時代にふさわしい「筋肉質な組織」へ生まれ変わるための儀式だと感じます。多くの住宅設備がコモディティ化(高付加価値だった製品が汎用品になり、価格競争に陥ること)する中で、自社のコアコンピタンスを再定義したノーリツの決断は、他の日本企業にとっても一つの指針となるのではないでしょうか。
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