2019年10月の大阪市内は、まさに熱狂の渦に包まれていたと言っても過言ではありません。日本経済新聞社が発表した調査データによれば、市内主要13ホテルの平均客室稼働率は92%という驚異的な数値を叩き出しました。前年と比較すると0.8ポイントの微減となりましたが、それでも「予約が取れない」という悲鳴が聞こえてくるほどの高水準を維持しています。
この驚異的な数字を支えた大きな要因は、国際的なビッグイベントの重なりにあります。まずは、2019年10月1日から始まった中国の大型連休「国慶節(こっけいせつ)」です。これは中国の建国記念日を祝う長期休暇で、日本は絶好の旅行先として選ばれました。さらに、日本中を興奮させたラグビーワールドカップの開催が、欧米諸国からも多くのファンを大阪へと呼び寄せたのです。
SNS上では、大阪を訪れた観光客から「どこも満室で、ようやく確保できたホテルが予算オーバーだった」「道頓堀がかつてないほど外国人で溢れかえっている」といった驚きの声が相次いでいます。こうした賑わいは、大阪という都市が持つ観光コンテンツの強さを改めて証明した格好となりました。世界中から視線が注がれる中で、都市全体のエネルギーが最高潮に達している様子が伺えます。
インバウンド需要の変化とホテル業界が直面する新たな課題
一方で、詳細な内訳を見てみると、手放しで喜んでばかりもいられない実情が浮かび上がってきました。実は13ホテルのうち8施設で稼働率が前年を下回っており、中でも「ホテルニューオータニ大阪」は2.1ポイントの低下を記録しています。これは「インバウンド(訪日外国人観光客)」の層に変化が生じているためだと考えられ、特にアジア圏からの団体客の減少がダイレクトに響いた形です。
ここで注目すべきは、数で勝負する「団体旅行」から、個人の嗜好を重視する「個人旅行(FIT)」へのシフトです。かつての爆買いに象徴されるような団体客に依存するビジネスモデルは、今まさに転換期を迎えています。客室が埋まっているという表面的な数字だけでなく、どのような層が、どのような目的で宿泊しているのかを精査することが、今後のホテル経営において不可欠な視点となるでしょう。
私自身の見解としては、現在の大阪のホテル市場は「成熟期」への入り口に立っていると感じます。90%を超える稼働率は素晴らしい実績ですが、特定の大イベントに頼り切るのではなく、平時でも選ばれ続ける独自の付加価値が求められています。ラグビーW杯で見せたような「おもてなし」の精神を、いかにリピーター獲得に繋げられるかが、2020年以降の大阪の命運を握るのではないでしょうか。
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