日本のビジネスシーンを牽引する東京都心のオフィス市場が、今まさに歴史的な局面を迎えています。オフィスビルの仲介を手掛ける三鬼商事が発表した最新データによれば、2019年10月における都心5区のオフィス空室率は、前月からさらに改善し1.63%という驚異的な数値を叩き出しました。
この「空室率」とは、ビル全体の面積に対して貸し出されていない部屋の割合を示す指標です。通常、5%程度が需給のバランスが取れた状態と言われますが、現在の1.63%という数字は、借りたい企業が山ほどいるのに入居できるスペースが全く足りていない「超売り手市場」であることを物語っています。
SNS上では、この異例の事態に対して「移転したくても条件に合う物件が見つからない」「賃料が上がりすぎていて固定費の圧迫が怖い」といった、企業の切実な声が次々と上がっています。経済の活況を喜ぶ声がある一方で、事業拡大を目指すスタートアップや中小企業にとっては、場所の確保が死活問題となっているようです。
賃料は2008年以来の2万2千円台へ突入
需要が供給を大幅に上回る状況を受け、ビルのオーナー側が提示する「募集賃料」も右肩上がりを続けています。2019年10月の平均賃料は、3.3平方メートル(約1坪)あたり2万2010円にまで上昇しました。これはリーマンショック直前の2008年12月以来、約11年ぶりとなる高水準です。
新築ビルの空室率は6.36%と一時的に上昇していますが、これは大規模な物件が供給された直後の募集期間によるものでしょう。対照的に、既存ビルの空室率は1.55%まで低下しており、利便性の高いエリアでは「空きが出た瞬間に埋まる」という、凄まじい争奪戦が繰り広げられているのが現状です。
私個人の見解としては、この空室率の低下は単なる景気浮揚だけでなく、企業の働き方改革に伴う「オフィス回帰」や「コミュニケーション活性化のための増床」が影響していると感じます。しかし、ここまでコストが跳ね上がると、IT技術を駆使したリモートワークへの移行を加速させる逆説的なきっかけになるかもしれません。
人件費の上昇と物流コストの変動が示す経済の現在地
オフィス市場だけでなく、労働市場においてもコスト上昇の波が押し寄せています。2019年10月の三大都市圏におけるアルバイト・パートの平均時給は1074円となり、派遣社員の時給も1584円と前年を大きく上回りました。人手不足を背景とした賃金アップは、働く側には朗報ですが、企業経営には重い課題となります。
一方で、国際物流には少し影が差しています。同月のアジア発米国向けコンテナ輸送量は、前年比で約10%近い減少を見せました。トラック運賃も、東京から大阪間の4トン車で5万4842円と下落傾向にあります。これは世界的な貿易摩擦や景気への先行き不透明感が、物流の動きにブレーキをかけている兆候と言えるでしょう。
都心の空室率が過去最低を更新し続けるという熱狂の裏側で、物流や国際貿易の数値は冷静な変化を示しています。不動産バブルのような勢いに乗るだけでなく、多角的な視点で経済のバランスを見極めることが、これからのビジネスパーソンには求められるのではないでしょうか。
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