2019年10月9日、日本銀行本店の一室で、日本の金融界を左右する重要な会合が持たれました。金融庁の遠藤俊英長官と日銀の雨宮正佳副総裁らトップが顔を揃える「金融庁・日銀連絡会」において、ある聞き慣れない言葉が議題に上がったのです。それが「カウンター・シクリカル・バッファー」という新資本規制でした。
この耳慣れない用語は、実は私たちの経済の安定を守るための重要な「貯金」の仕組みを指しています。2008年に世界を揺るがしたリーマン・ショックを教訓に誕生した国際的な銀行規制「バーゼル3」の一環として、景気が良い時期に銀行に余分な資本を蓄えさせ、不況時にはそれを切り崩して貸し渋りを防ぐという狙いがあります。
世界で相次ぐ規制発動と日本の現在地
世界に目を向けると、2019年12月03日現在、欧州各国ではこの規制の発動が相次いでいます。ドイツやフランス、ベルギーといった国々では、2020年4月から7月にかけて、次々と銀行の資本上積みを求める動きが加速しています。これは、長引く低金利によって膨らみすぎた不動産などの資産バブルに先手を打つための防衛策なのです。
一方、日本の現状はどうでしょうか。国際通貨基金(IMF)は2019年11月25日の報告書にて、日本も現在の0%という比率を引き上げるべきだと警告を発しました。さらに、この規制をメガバンクだけでなく全ての国内銀行に広げるべきだと主張しています。ネット上では「再びバブルが弾ける予兆か」と不安視する声や「銀行の体力が試される」といった意見が飛び交っています。
「アクセルとブレーキ」を同時に踏めない苦悩
日銀も不動産融資が1990年末以来の過熱状態にあることを認めていますが、現時点ではこの規制の発動を見送る方針です。その理由は、現在の金融政策との「不整合」にあります。景気を下支えするために金融緩和という「マネーの蛇口」を全開にしている中で、規制という名の「ブレーキ」を踏むのは矛盾しているという論理です。
私は、当局のこの慎重な姿勢は理解できるものの、危うさも感じています。一度火がついたバブルを口先だけの「監督」で抑え込めるほど、市場は甘くありません。地銀の経営難も相まって、利益を求めた過度なリスクテイクが、かつてのリーマン危機の時のような連鎖を引き起こさないか、私たちは歴史の教訓を今一度噛み締める必要があるでしょう。
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