【シンガポール最新教育事情】IT立国の命運を握る?熱狂するプログラミング教育の最前線

2019年12月04日、シンガポールでは11月中旬から始まった1カ月半にわたる長期休暇の真っ只中にあります。華やかなクリスマスの装飾に彩られたショッピングモールは、バカンスを楽しむ人々で賑わっています。しかし、そんな浮足立った喧騒をよそに、真剣な眼差しでモール内の一角へと急ぐ子供たちの姿が目立ちます。彼らの目的地は、いまシンガポールで爆発的な人気を誇る「プログラミング塾」です。

低学年向けのクラスを覗くと、子供たちが「スクラッチ」という教材に夢中になっています。これは文字を打ち込むのではなく、「右へ動かす」といった命令が書かれたブロックを画面上でつなぎ合わせることで、視覚的にプログラムの仕組みを理解できる初心者向けの言語です。パズルのような感覚で論理的思考を養えるこのツールを使い、5日間で自分だけのゲームやアプリを作り上げる体験は、子供たちにとって最高のアトラクションといえるでしょう。

シンガポールの親たちの教育熱は、世界でもトップクラスとして知られています。実際に2017年の調査によれば、子供1人あたりにかける教育費は約760万円を超え、世界平均を大きく上回る第3位にランクインしました。今回のプログラミング熱も例外ではなく、10時間の追加履修を希望する家庭が後を絶ちません。SNS上でも「これからの時代、コードが書けないのは読み書きができないのと同じ」といった、親たちの切実な声が飛び交っています。

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国家戦略と連動する「生き残り」のためのスキル

なぜ、これほどまでに親たちはプログラミングに熱い視線を注ぐのでしょうか。その背景には、2020年から小学校高学年でプログラミングが必修化されるという制度変更があります。しかし、それ以上に切実なのは「産業構造の激変」への危機感です。シンガポール政府は、2019年11月にAI(人工知能)関連産業を国家レベルで育成する戦略を発表しました。資源を持たないこの国にとって、先端技術こそが唯一の武器なのです。

プログラミング塾「コーディング・ラブ」の創業者であるフー・ヨンニン氏は、親自身が職場の変化を肌で感じていることが、このブームの原動力だと分析しています。AIの台頭により、これまでの事務的なスキルだけでは通用しない時代がすぐそこまで来ています。教育熱心な保護者たちは、子供たちが将来の労働市場で「選ばれる側」になるために、一刻も早くテクノロジーに親しませることが不可欠だと考えているのでしょう。

単なる知識の詰め込みではなく、ロボット工学や起業家精神(アントレプレナーシップ)を同時に教える塾も登場しており、教育のあり方は急速にアップデートされています。編集者としての私の視点では、この動きは単なる流行ではなく、国家の存亡をかけた「人材投資」そのものだと感じます。変化を恐れず、遊びの延長で未来の武器を手に入れるシンガポールの子供たちが、数年後のIT業界を牽引する存在になることは間違いありません。

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