2019年12月04日、日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビー・ワールドカップの余韻が冷めやらぬ中、経済学者の橘木俊詔教授が提唱する「スポーツを通じた地域活性化」が大きな注目を集めています。教授は、東京や横浜といった大都市圏だけでなく、岩手や大分などの地方都市を含めた全国12会場すべてが盛況となった事実を高く評価しています。
近年のオリンピックは規模が膨れ上がり、開催できる都市が設備力の整った大都市に限定されるという課題を抱えています。一方で、ラグビーやサッカーのように広域で分散開催するスタイルは、まさに現代に求められる「スポーツ界の地方分権」の理想形といえるでしょう。SNS上でも「地方にトップアスリートが来ることで街が活気づく」と期待の声が上がっています。
成功の鍵は「地域性」と「アクセスの良さ」
地方分権の成功例として橘木教授が挙げるのが、沖縄を拠点とする「琉球ゴールデンキングス」です。米軍基地の文化背景からバスケットボールが根付いていた沖縄の特性を見事に捉え、Bリーグの前身時代から驚異的な集客力を誇ってきました。地域の潜在的なニーズを掘り起こすことこそが、プロスポーツビジネスの先見の明といえるはずです。
また、人口約7万3千人の佐賀県鳥栖市を本拠とする「サガン鳥栖」の躍進も見逃せません。このチームの強みは、九州の交通の要衝であるという立地条件にあります。高速道路の結節点であり、鉄道の分岐点でもある鳥栖には、九州全域からファンが集う「磁力」が備わっています。このように、戦略的な立地と地域愛が融合した時、地方は大きな力を発揮します。
関西を燃え上がらせる「ダービーマッチ」の魔力
関西経済を活性化させる強力なコンテンツとして、教授は「ダービーマッチ」の重要性を説いています。これは同じ地域に本拠地を置くチーム同士の対戦を指す言葉です。例えば、Jリーグのガンバ大阪とセレッソ大阪による「大阪ダービー」は、単なる試合以上の、意地と誇りがぶつかり合う特別な付加価値を持っています。
「この相手にだけは絶対に負けられない」という対抗意識を煽ることは、エンターテインメントとして非常に有効な戦略です。バスケットボールの京都ハンナリーズと大阪エヴェッサの対戦も、より鮮明に「関西ダービー」として演出していくことで、地元の熱量はさらに高まっていくでしょう。こうしたライバル関係の構築こそが、地域を元気にする特効薬となります。
生粋の阪神タイガースファンである教授は、阪神の発展もまた「巨人」という強大なライバルへの対抗心があったからこそだと分析します。昭和の時代、東京一極集中への反発心が「打倒・巨人」という熱狂を生み、関西のシンボルとしての阪神を形作りました。関西経済の地盤沈下を防ぐためにも、私たちは再び猛虎の復活と熱いライバル関係を望んでいるのです。
私は、スポーツには単なる勝敗を超えた「地域のアイデンティティ」を再構築する力があると信じています。大都市に富が集中する現代において、スポーツを通じて人々が地元に誇りを持ち、経済が循環する仕組みを作ることは、日本の未来にとって不可欠な戦略ではないでしょうか。スポーツがつなぐ地域の絆が、新しい時代の扉を開くはずです。
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