今、私たちの食卓やカフェタイムに華やかな変化が訪れています。これまで料理の隅に添えられる脇役だったバラが、主役級の「食材」として大きな注目を集めているのです。ケーキやドーナツ、さらにはお酒に至るまで、その活用範囲は驚くほど広がっています。
バラが選ばれる理由は、単に見た目の美しさだけではありません。蓋を開けた瞬間に広がる甘美な香りが、料理全体のクオリティを劇的に引き立ててくれるのです。ネット通販の普及により、一般家庭でも「エディブルフラワー(食用花)」が手軽に入手できるようになったことも、このブームを後押ししているのでしょう。
2019年11月1日にオープンしたばかりの「渋谷スクランブルスクエア」では、その象徴的な光景が見られました。6階のショップに並んだのは、バラの花びらが優雅に舞い降りたようなドーナツです。これを見た女性客からは「何これ、かわいい!」と歓声が上がり、SNSでも瞬く間に拡散されました。
完売続出!美容と健康を意識した「バラのドーナツ」の魔力
この話題をさらったのは「アップビートトーキョー」が提供する「美ドーナツ」です。動物性食品を一切使わない「ビーガン」向けのスイーツ専門店として、期間限定で登場しました。驚くべきはその人気ぶりで、当初の目標を大幅に上回る売れ行きを記録したのです。
代表の神宮司希望さんによれば、1個480円という強気の価格設定ながら、他の商品よりもバラ付きのドーナツが圧倒的に支持されたといいます。初日は午前中に完売してしまい、急遽用意する数を3倍に増やして対応したほどです。見た目の愛らしさと、バラが持つ美容効果への期待が、感度の高い層に刺さった結果といえます。
こうした動きは、何も最近始まったことではありません。東京都江戸川区の「パティシエ・ヒロヤマモト」は、2011年ごろから食用花の可能性に着目してきた先駆者です。こちらでは、香りが非常に強い「横田ローズ」という品種を厳選し、ケーキやマカロンに取り入れています。
特に人気の「マカロンローズ」には、生のバラから作った贅沢なジャムが使用されています。山本浩泰社長は、花が持つ独自の苦味や渋味こそが、スイーツの甘さを際立たせる隠し味になると語ります。単なる飾りではなく、味の奥行きを作るための「スパイス」としてバラを捉えている点が、プロのこだわりを感じさせます。
クラフトビールに日本酒も!進化するバラのアルコール飲料
バラの進撃はスイーツの世界に留まりません。キリンビール子会社のスプリングバレーブルワリーは、2018年10月にバラを漬け込んで香り付けしたクラフトビールを京都で限定販売しました。1ヶ月の予定がわずか10日で完売するという、異例の事態を巻き起こしています。
さらに、山形県鶴岡市のスタートアップ「WAKAZE」は、2019年2月からバラとコメを一緒に発酵させた革新的なお酒を展開しています。ロゼワインを思わせる淡いピンク色と、花と米が織りなす複雑な香りは、まさに新時代の醸造酒と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
2020年1月からは、大学教授との共同研究による「生のバラ」を使った試験醸造もスタートする予定だといいます。個人的には、バラという伝統的な美の象徴が、最新の醸造技術や健康志向と結びつくことで、日本の食文化に新たな「香り」という付加価値を根付かせていくのではないかと期待しています。
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