バイクファンの間で語り継がれるスズキの伝説的な技術が、ついに現代のステージへと舞い戻ってきました。2019年の東京モーターショーで大きな注目を集めた新型「ジクサー250」には、スズキのアイデンティティとも言える「油冷エンジン」が搭載されています。2008年に惜しまれつつ姿を消してから約11年、最新の技術を纏って復活したこのエンジンは、単なる懐古趣味ではない革新的な進化を遂げているのです。
一般的にバイクのエンジンを冷やす方法は、走行中の風を利用する「空冷」と、冷却水を循環させる「水冷」の2種類に分かれます。空冷は構造がシンプルで軽量ですが、近年の厳しい排ガス規制に対応するには温度管理が難しいという側面がありました。一方で水冷は冷却性能に優れるものの、ラジエーターなどの部品が増えるため、どうしても車体が重くなり、コストも上昇してしまいます。
そこでスズキが導き出した答えが、潤滑用のエンジンオイルを冷却にもフル活用する「油冷」という第3の選択肢です。水冷よりも軽くコンパクトで、空冷よりもはるかに高い冷却性能を誇るこのシステムは、まさに両者の「いいとこ取り」と言えるでしょう。1985年の誕生以来、多くのライダーを魅了してきたこの技術が、現代の厳しい環境基準をクリアして再登場したことは、エンジニアの情熱の賜物ではないでしょうか。
今回の復活を支えたのは、冷却の考え方を「点」から「線」へと転換した画期的な設計思想です。かつての油冷エンジンはオイルを霧状に吹き付ける方式でしたが、新型では燃焼室の周囲にオイルが通る細い管を「一筆書き」のように配置しました。これにより、オイルとエンジンが触れる面積は従来比でなんと30倍にも達し、水冷エンジンに匹敵する冷却効率を実現しています。
SNS上では「油冷復活は胸が熱くなる」「スズキにしかできない変態技術(褒め言葉)を待っていた」といった熱狂的な反響が相次いでいます。11年前には量産化が難しかった複雑な鋳造技術を克服し、ついに製品化に漕ぎ着けたスズキの執念には脱帽するばかりです。単に効率を追い求めるだけでなく、軽量でスポーティな走りというバイク本来の楽しさを追求する姿勢には、ファンならずとも応援したくなる魅力があります。
この新型エンジンを搭載したジクサー250は、2019年夏からインドでの販売が開始され、約24万5000円という驚きの価格設定で市場を沸かせています。日本国内での発売時期については2019年12月06日現在では未定とされていますが、導入を待ち望む声は日増しに高まっています。11年ぶりの伝統復活という期待に応えるためにも、徹底した品質管理のもとで私たちの手元に届く日が待ち遠しいですね。
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