トヨタ自動車がいよいよ、世界最大の自動車市場である中国において、電気自動車(EV)戦略を本格化させます。2019年12月06日現在、同社は高級ブランド「レクサス」や「C-HR」のEVモデルを2020年に一斉投入することを明らかにしました。中国では現在、政府による補助金の削減が逆風となっていますが、トヨタはこれまで培ってきた圧倒的なハイブリッド(HV)技術を転換し、先行する独フォルクスワーゲン(VW)の背中を追います。
中国は日本の5倍に相当する年間2000万台以上の新車が販売される、まさに巨大市場です。2017年7月に英政府がガソリン車の販売禁止を打ち出した直後、中国政府も同様の方針を示し、世界的な「EVシフト」の震源地となりました。これに素早く反応したのがVWです。規制策定の場に深く食い込み、市場での優位性を確保しました。一方、日系メーカーはこれまで慎重な姿勢を崩していませんでしたが、ついにトヨタが反撃の狼煙を上げました。
その戦略の要となるのが、高いブランド力を誇るレクサスです。2019年の中国自動車商品魅力度調査において、レクサスはポルシェやBMWといった強豪に続く第3位にランクインしました。中国のSNS上では「レクサスの静粛性と質感は別格」「日本製というだけで信頼できる」といった声が多く聞かれ、高級車としての地位を確立しています。この「勢いのあるブランド」をEVの先陣に切ることで、初期の販売を一気に加速させる狙いがあります。
「匠の技」とHV技術が融合した新型EV「UX300e」の衝撃
トヨタの切り札として2020年春に中国で初公開されるのが、SUVタイプのEV「UX300e」です。航続距離は約400キロメートルを確保し、電池を床下に配置して低重心化することで、走りの楽しさも追求しています。ここで重要になるのが、トヨタが長年HV(ガソリンと電気の併用車)で磨き上げた電池管理システムです。電池を劣化させず、長く安定して使うためのノウハウは、他社が容易に真似できるものではありません。
レクサスの沢良宏執行役員は、2020年春という投入時期について「技術力が問われるタイミング」と自信を覗かせています。単に電気で走るだけでなく、モーターを精密に制御して速度を微調整する技術や、徹底した車内の静音性など、レクサスが掲げる「匠」の精神が随所に盛り込まれています。中国の消費者が求める「品質への信頼」に応えることで、VWが先行する市場の勢力図を塗り替えようとする意志が感じられます。
対するVWも黙ってはいません。中国子会社のトップは2020年に約4800億円を投じる計画を発表しており、王者の座を譲る気配はありません。しかし、トヨタの強みは「仲間作り」にもあります。電池最大手の中国CATLとの提携や、EV大手BYDとの共同開発など、着実に足場を固めています。HVで稼ぎつつ、満を持して高品質なEVを送り出すトヨタの「後出しジャンケン」的な戦略が、どこまで通用するのか注目されます。
個人的な視点として、トヨタの慎重さは決して「遅れ」ではなく「熟成」だと捉えるべきでしょう。急速に普及した中国EV市場では、故障や品質トラブルへの不満も出始めています。そこで「日本製の安心感」を持つレクサスが登場することは、成熟し始めた市場のニーズに合致しています。世界市場の行方を占うこの中独対決は、2020年を境にさらに激しさを増すことは間違いありません。
コメント