「恥の多い生涯を送ってきました」というあまりに有名な一節で知られる、日本文学の不朽の名作『人間失格』。太宰治が遺したこの破滅の物語が、誰も予想しなかった大胆な変貌を遂げてスクリーンに現れました。2019年12月06日に注目を集めているアニメーション映画『HUMAN LOST 人間失格』は、原作の精神を継承しながらも、舞台を遥か未来の東京へと移した野心作です。
物語の舞台は、昭和111年の東京です。この世界では「S.H.E.L.L.(シェル)」と呼ばれる社会管理システムにより、体内のナノマシン(目に見えないほど微細なロボット)をネットワークで制御することで、120歳という驚異的な長寿が保障されています。しかし、その裏側では深刻な経済格差や、システムから外れた人間が怪物へと変貌する「ヒューマン・ロスト現象」という歪みが日本を崩壊の危機に陥れていました。
伝説のアニメに挑むクリエイターたちの熱き挑戦
本作を形作るのは、日本が誇るトップクリエイター陣です。監督には海外でも評価の高い木﨑文智氏、脚本には緻密な世界観構築で知られる小説家の冲方丁氏、そしてスーパーバイザーに本広克行氏を迎えています。企画から完成まで4年以上の歳月を費やした今作は、制作陣が「『AKIRA』や『攻殻機動隊』に並ぶ伝説的なSFアニメを目指した」と語る通り、並々ならぬ気概が込められています。
SNS上では、太宰治の古典と近未来SFという一見ミスマッチな組み合わせに驚きの声が広がっています。「文豪作品がバイクアクションになるとは思わなかった」「絶望の描き方が新機軸」といった投稿が相次ぎ、特に北米150館以上での先行公開が成功したというニュースは、日本のアニメファンにとっても大きな衝撃を与えました。まさに、国境を越えて現代の若者の心に突き刺さる作品と言えるでしょう。
木﨑監督は、主人公の大庭葉藏が持つ「道化」としての振る舞いや、周囲を不幸にしてしまう危うさといった原作の本質を大切にしたと語ります。一方で、映像面ではポリゴン・ピクチュアズによる最新の3DCGを駆使。冒頭のバイクチェイスは、名作『マッドマックス』を想起させるほどの迫力です。単なる古典の映像化ではなく、現代の閉塞感を投影した「ダークヒーローもの」として昇華されています。
個人的には、古典文学をここまで攻撃的に再構築した勇気に感銘を受けました。名作を崇めるだけでなく、現代の技術と感性で解体・再構築することこそが、新しい文化を生むのだと感じさせられます。2019年というオリジナルアニメ映画の激戦区において、本作が放つ異彩は間違いなく映画史に刻まれるはずです。太宰が描いた絶望が、ネオン煌めく未来都市でどう響くのか、ぜひその目で確かめてみてください。
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