2019年12月01日、政府・与党が打ち出した新たな方針が世間を賑わせています。それは、企業や個人による度を超えた「節税策」を封じ込めるための包囲網です。特に注目を集めているのが、ソフトバンクグループ(SBG)が巨額買収の際に見せた驚くべき手法や、富裕層の間で定番化していた海外不動産投資への規制です。SNSでは「ついにメスが入ったか」「不公平感が解消されるのは良いこと」といった歓迎の声が上がる一方で、「また新しい抜け穴が見つかるのでは」といった冷ややかな意見も飛び交っています。
今回の改正の目玉は、SBGが2018年03月に実施した、英アーム・ホールディングスの買収に絡む手法の禁止です。SBGは、子会社から多額の配当を吸い上げた後、価値の下がった子会社株を売却することで、帳簿上の巨大な赤字を算出しました。この結果、1兆円を超える利益を上げながらも法人税負担がゼロになるという、魔法のような事態が起きていたのです。この事態を重く見た政府は、意図的な赤字創出を防ぐ新ルールを、2020年度の税制改正大綱に盛り込む方針を固めました。
富裕層の「海外不動産節税」もいよいよ終焉へ
個人の富裕層にとっても、2019年12月は大きな転換点となりそうです。これまで、アメリカなどの海外不動産投資で発生した建物の減価償却費(価値が減った分を経費とする考え方)による赤字を、国内の所得と合算して所得税を減らす手法が広く行われてきました。しかし、2020年度からはこの「損益通算」が封じられる見通しです。不動産セミナーで「もうすぐ使えなくなる」と囁かれ続けてきた手法がついに現実のものとなります。税の公平性を求める国民の声が、制度を動かした形と言えるでしょう。
さらに、賃貸アパート大家による消費税の還付スキームにも厳しい規制が入ります。金(ゴールド)の売買を繰り返して売上構成を偽装し、本来は還付されないはずのアパート建築費にかかる消費税を取り戻す手法は、もはや通用しなくなります。2019年10月の消費増税を経て、私たちは1円単位の税金に敏感になっています。そんな中で、一部の層だけがシステムの隙を突いて巨額の利益を得ることは、もはや社会的に許容されないフェーズに入ったのだと私は強く感じます。
いたちごっこを防げるか?「GAAR」導入の議論
しかし、一つの穴を塞げばまた別の穴が生まれるのが節税の世界です。一部の有識者からは、英国などが導入している「一般的租税回避防止規定(GAAR)」を日本も取り入れるべきだという意見が出ています。これは、法律の形式を整えていても、実態として税逃れが目的であれば課税できるという強力な武器です。現時点では当局の裁量が大きくなりすぎるとして見送られていますが、グローバルな「節税いたちごっこ」を終わらせるには、いずれ避けて通れない議論になるのではないでしょうか。
パナマ文書の衝撃以降、世界中で富の偏在に対する厳しい視線が注がれています。日本がOECDの勧告に従い、制度の見直しを進めるのは当然の流れです。ルールを厳格化することは、真面目に納税している市民や中小企業の信頼を守ることにも繋がります。2019年12月中旬にまとまる税制改正大綱が、真に公平な社会への一歩となることを期待せずにはいられません。小手先のテクニックではなく、本業の価値で競い合う健全な経済環境こそが、今の日本には必要です。
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