【漢字の深掘り】「人口」のルーツは口にあり?食と命、言葉を司る「口」の驚くべき役割と老子の教え

私たちが日常的に使っている「人口」という言葉ですが、なぜ「人」の数を「口」という漢字で表すのか、不思議に思ったことはありませんか。実は、人間には口が一つしかないため、古来より口の数はそのまま人の数として捉えられてきました。この数え方は非常に歴史が深く、紀元前の中国で編纂された儒教の経典『孟子』の一節にも、八人家族を「八口の家」と記した記録が残っているほど、人々の生活に根ざした表現なのです。

ネット上でも「人口の『口』が食べることと直結しているのは、生命の根源を感じる」といった声が上がっており、言葉の由来に納得する人が多いようです。漢字学者である阿辻哲次氏の解説によれば、中国最古の漢字字典として知られる『説文解字(せつもんかいじ)』において、口は「言い、食らうための場所」であると定義されています。つまり、口という器官は「食事」と「発声」という、人間が生きていく上で欠かせない二つの大きな役割を担っているのです。

スポンサーリンク

食と言葉、漢字の世界で圧倒的に多いのはどっち?

口へんの漢字を思い浮かべると、「味わう」や「噛む」といった飲食に関する字がまず浮かぶかもしれません。しかし、意外なことに漢字字典の「口部」を紐解いてみると、飲食に関連する字よりも、音や息を出す行為に関する字の方が圧倒的に多く存在します。例えば「咳(せき)」や「吹く」、「嗤(わらう)」といった字がその代表格です。人間がいかに多様な音を使い分け、感情や意思を伝達することに口を駆使してきたかが、文字の構成からも見て取れますね。

現代のSNSでも「食べる楽しみ」と「話す楽しみ」のどちらが大切かという議論は尽きませんが、生物学的な観点で見れば、答えは明白だといえるでしょう。たとえ数日間言葉を発しなくても、精神的なストレスこそあれ命に関わることは稀ですが、飲食を絶てば人は生きていけません。編集部としても、言葉を紡ぐ仕事をしている身でありながら、やはり生命を維持する「食べる」という機能こそが、口の持つ最も本質的な使命であると感じずにはいられません。

飽食への警句?老子が説く「五味」と味覚の真実

2019年12月08日現在、グルメ情報が溢れる世の中ですが、古代中国の哲学者である老子は、美食に対して独特の警告を鳴らしています。『老子』の中には「五味は人の口をして爽(たが)わしむ」という言葉があり、これは「甘い、辛い、酸っぱい、苦い、塩辛い」という五つの味を追い求めすぎると、かえって味覚が麻痺し、本当の味が分からなくなってしまうという戒めです。贅沢に慣れすぎることへの危惧は、飽食の時代に生きる私たちにも鋭く刺さるメッセージではないでしょうか。

しかし、この老子の考え方には面白い裏返しもあります。味覚が混乱することを嫌うのは、それだけ食を愛している証拠でもあるからです。俗世を離れてカスミを食べて生きるとされる仙人や隠者たちでさえ、きっとそのカスミの「鮮度」や「旨味」にこだわっていたに違いありません。どんなにストイックな生き方を目指しても、口にするものに喜びを見出してしまうのは、人間が持つ愛すべき本能なのかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました