直木賞作家・道尾秀介が明かす「ラジオの奇跡」――25年前のノイズから始まった伊集院光との運命的物語

物語の魔法使いとして知られる作家の道尾秀介さんが、自身の原点ともいえる不思議な体験を語ってくださいました。19歳という、小説家への夢を抱き始めたばかりの多感な時期。道尾さんは、映像のない「語り」の世界で構成力を磨こうと、お風呂でも聴ける「ふろらじ」なる防水ラジオを手に入れたのです。当時、電波状況の悪いアパートの1階で、雑音の隙間から偶然こぼれ落ちてきた一筋の音声が、その後の人生を大きく変えることになります。

お湯に浸かりながら格闘する中で耳に飛び込んできたのは、ある男性パーソナリティの「焼き芋じゃないんだから!」という突拍子もない笑い声でした。最初は意味不明だったそのフレーズも、後の説明でアニメ『ど根性ガエル』のピョン吉に絡めたジョークだと判明します。語りの順序をあえて入れ替えることで、聴き手を一気に惹きつける高度な話術。道尾さんはその技術に圧倒されつつも、再び砂嵐の音へと消えていったその声の主を知る術はありませんでした。

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25年の時を超えて繋がる「伏線回収」の真実

それから年月が流れ、道尾さんは見事に小説家としてのデビューを果たします。熱狂的なラジオファンとなった彼は、特に伊集院光さんの番組『深夜の馬鹿力』に魅了され、いちリスナーとしてネタを投稿するほどに没頭していました。そんな折、作家生活10周年の節目に訪れた2019年12月08日現在、驚くべき事実が発覚します。友人が所有していた古い録音音源から、あの「焼き芋」のくだりが流れてきたのです。それは、若かりし日の伊集院さんの声でした。

憧れ続けていた存在と、実は四半世紀も前に「出会っていた」という事実は、まるで極上のミステリー小説のようです。このエピソードに対しSNSでは、「事実は小説より奇なりを地で行く展開」「25年前の電波を捕まえていたなんてロマンチックすぎる」と、多くのファンが感動に包まれています。小説家として大成した道尾さんが、独り静かに涙したというエピソードからは、表現者としての純粋な敬意が伝わってきます。

先日、ついに道尾さんはゲストとして伊集院さんの番組に出演し、直接この思い出を伝えることができました。伊集院さん本人は「順序を間違えただけかも」と謙遜されていたそうですが、受け手に届いた感動こそが真実です。一度放たれた電波は二度と捕まえられませんが、誰かの心に深く刺さり、人生を支える糧になることがあります。表現のプロ同士が響き合う瞬間を目の当たりにし、私たちも言葉の持つ無限の可能性を信じずにはいられません。

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