セレクトショップの雄として知られるユナイテッドアローズが、今、大きな戦略の転換期を迎えています。同社は現在、複数の自社ブランドを一つの空間に集約した「総合店」の展開を加速させているのです。2019年に入り、札幌市や東京・渋谷といった主要都市に次々と大型店舗をオープンしており、ビジネスシーンを支える端正なスーツから、日常を彩るカジュアルウェアまで、圧倒的なラインナップを誇ります。
かつてのユナイテッドアローズは、「グリーンレーベル リラクシング」や「ビューティ&ユース」など、ブランドごとの個性を際立たせるために独立した店舗運営を主軸としてきました。しかし、ここ数年で消費者の行動は劇的に変化しています。特にZOZOTOWNに代表されるファッションEC(ネット通販)の普及により、まずネットで商品を吟味し、その実物を確認するために足を運ぶ「ショールーミング」的な動きが定着しました。
ネットで多くの選択肢に触れたお客様は、店舗に対しても同等の、あるいはそれ以上の「出会い」を期待するようになっています。取締役の松崎善則氏が指摘するように、単独店では品揃えの限界から、ネットで見た商品が見つからないという機会損失が発生していました。これに対し、約630平方メートルという通常店の2倍近い面積を持つ渋谷スクランブルスクエア店などは、まさにネットとリアルを繋ぐ架け橋としての役割を担っているのでしょう。
接客のプロが提案する「シーンレス」なファッション体験
総合店の強みは、単なる面積の広さや商品数だけではありません。特筆すべきは、そこで働くスタッフの卓越した提案力です。同店の従業員は、あらゆるライフスタイルに対応できるよう特別な研修を受けています。一人のスタッフがオンタイムのスーツ選びから、オフの休日に楽しむスタイルまでを一貫してコーディネートできる体制は、ブランドの垣根を越えた「総合店」ならではの贅沢なサービスといえるでしょう。
SNS上の反響を覗いてみると、「一箇所で色々なラインが見られるのは時短になって助かる」といった効率性を歓迎する声や、「店員さんの知識が豊富で、自分では選ばない組み合わせを提案してもらえた」といった、対面接客の価値を再認識する投稿が目立ちます。ネットショッピングが便利になればなるほど、人は「自分に本当に似合うものを選んでほしい」という、血の通ったアドバイスを求めるようになるのかもしれません。
アパレル業界全体を見渡せば、外資系ブランドや百貨店アパレルの撤退が相次ぐなど、厳しい冬の時代が続いています。しかし、ユナイテッドアローズの試みは、変化を恐れず、デジタルの利便性とリアルの感動を融合させることで、新たな活路を見出そうとする強い意志を感じさせます。2019年12月8日現在、この「総合店」へのシフトは、厳しい市場を生き抜くための最も洗練された回答の一つではないでしょうか。
編集者としての私見ですが、今の消費者が求めているのは、単なるモノの購入ではなく「納得感」です。スマホ一つで何でも買える時代だからこそ、広大な店舗で生地に触れ、専門知識を持つスタッフと対話する時間は、代えがたい「エンターテインメント」へと進化しています。2020年3月期に向けた新店舗の展開により、私たちの買い物体験がどのように彩られていくのか、今後の動向から目が離せません。
コメント