中国の商業不動産市場において、今、最も注目すべき存在と言えるのが大手デベロッパーの新城控股(Xincheng Holdings)でしょう。彼らは、2020年をターゲットに、傘下の商業施設「吾悦広場(Wuyue Plaza)」の店舗数を現在の約2倍となる100カ所へと大幅に拡大させるという、非常に野心的な計画を推進しています。この壮大なプロジェクトの総事業費は、なんと1兆円規模に達する可能性を秘めており、業界の盟主である**大連万達集団(Dalian Wanda Group)**に次ぐ、「ポスト万達」の地位を虎視眈々と狙っていることが明らかになりました。
新城控股の展開する大型商業施設「吾悦広場」は、単なるショッピングモールではありません。衣料品ブランドの「ユニクロ」をはじめとするアパレルや化粧品のテナントに加え、映画館やバラエティ豊かな飲食店などを複合的に組み合わせた**複合商業施設(ミックスド・ユース)**の形式を採用しています。2019年には22カ所の新規オープンを予定しており、さらに2020年も勢いを落とさずに店舗網を拡大していく構えです。この急速な拡大戦略の背景には、ある「秘策」が存在します。
その秘策とは、業界最大手である万達集団から引き抜いた優秀な人材、つまり経営ノウハウにあります。現地メディアの報道によると、2016年から2017年にかけて、万達の経営幹部が複数名、新城控股へと転職を果たしました。彼らが持ち込んだとされるのは、商業施設と周辺の住宅開発を一体的に進めるという、万達の得意とする手法です。新城の幹部も「商業施設の周辺に住宅をつくることで、相互に集客力を高められる」と語っているように、住宅住民を恒常的な顧客として取り込み、商業施設の魅力を高める相乗効果(シナジー)を狙っているのです。商業施設の事業費は、住宅部分を含めて1カ所あたり10億元(約160億円)から50億元が目安とされています。
新城のこの積極果敢な経営戦略には、私自身、非常に高い成長ポテンシャルを感じずにはいられません。中国国内において、都市化の進展とともに可処分所得が増加し、消費者のライフスタイルはより多様化・高度化しています。単にモノを買う場所としてだけでなく、友人や家族と「時間を過ごす場所」としての商業施設の価値が高まっている今、吾悦広場のような複合施設は、まさに時代のニーズに応えるものと言えるでしょう。万達の成功体験を学びつつ、独自の進化を遂げようとする新城の試みは、中国商業不動産の新たなトレンドを形作る可能性を秘めています。
一方で、この急進的な拡大路線には、潜在的なリスクも存在することを忘れてはなりません。中国の商業施設市場は、Eコマース(電子商取引)、つまりインターネット通販の圧倒的な台頭によって、実店舗の集客が伸び悩むという厳しい現実に直面しています。さらに新城控股の借入金は、2019年4月末時点で967億元(約1兆6千億円)に達しており、2018年末からわずか4カ月で33パーセントも増加しているのです。急速に出店を拡大させる経営手法は、多額の資金調達を必要とするため、業界関係者からは「急速な拡大戦略には不透明さも残る」との声も上がっています。新城がこの財務的な重荷を乗りこなし、計画通りに100カ所の店舗を実現できるかどうか、今後の動向から目が離せません。
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