2019年12月10日現在、私たちのすぐ側で予期せぬ「隣人」との遭遇が相次いでいます。かつては山深い場所に生息していたイノシシたちが、驚くべきスピードで市街地へと進出しているのです。ここ30年足らずでその個体数は3倍以上に膨れ上がり、もはや地方だけの問題ではなくなりました。人々が牙にかけられたり、激突によって負傷したりする痛ましい事故が後を絶たず、国や自治体も対応に苦慮しています。
直近の2019年11月下旬には、大阪府富田林市の閑静な住宅街で親子とみられる3頭のイノシシが目撃されました。現場は工場や家々が密集する地域で、下校中の児童が遭遇するという危機一髪の事態です。SNS上でも「まさかこんな街中にまで」と驚きと不安の声が広がっています。富田林市の担当者によれば、以前は農地付近が主だった出没エリアが、ここ1〜2年でより都市部へと移動しているという実態が浮き彫りになりました。
止まらない都会への進撃!香川や東京でも被害が続出
四国の香川県高松市でも事態は深刻です。2019年10月にはJR高松駅の至近距離で女性が体当たりされたほか、自転車に乗った親子が衝突され幼児が負傷する事故も発生しました。2019年度の通報件数は11月下旬時点で約240件に達し、前年度の数字を大幅に更新しています。自治体は罠の増設や防護柵の補修に追われていますが、次から次へと現れる個体群に対して、防戦一方となっているのが現状だと言えるでしょう。
驚くべきは、大都会・東京の足立区でも同様の騒動が起きたことです。2019年12月3日、荒川の河川敷に現れたイノシシは、なんと200メートルもの川幅を悠々と泳ぎ切り、対岸へと逃走しました。翌2019年12月4日には約25キロ離れた埼玉県富士見市で捕獲されましたが、専門家は若い個体が川に沿って都心部へ流入していると分析しています。私たちの生活圏は、彼らにとって新たな「開拓地」になりつつあるのかもしれません。
なぜ今、イノシシが街へ?背景にある社会問題とマナーの欠如
この異常事態の背景には「耕作放棄地」の増加があります。これは、高齢化や後継者不足によって管理されなくなった農地のことです。草木が荒れ放題となった場所は、天敵から身を隠しやすく、かつ餌も豊富なイノシシにとって最高の「根城」となります。過疎化が進むことで人間と野生動物の境界線が曖昧になり、イノシシたちが生活圏を拡大する格好の条件が整ってしまったのです。
さらに、一部の人間による不用意な「餌付け」も事態を悪化させています。一度「人間から食べ物をもらえる」と学習した個体は、警戒心を捨てて執拗に街へ現れるようになります。これは可愛い動物への親切心ではなく、地域住民を危険に晒す無責任な行為に他なりません。感染症の媒介リスクも考えると、野生動物との安易な接触は厳に慎むべきです。
編集者としての見解ですが、この問題は単なる「獣害」として片付けるべきではありません。日本の地方が抱える人口減少という構造的課題が、イノシシの進出という形で都会に突きつけられているのだと感じます。その場しのぎの駆除だけでなく、国が主導して野生動物の管理体制を根本から再構築する時期に来ているのではないでしょうか。一人ひとりがこの現実を直視し、適切な距離感を保つことが、共生への第一歩となるはずです。
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