2019年12月10日、世界の経済を牽引する米国市場において、ある意外な分野が熱い注目を浴びています。それは、私たちの生活に癒やしを与えてくれる「ペット市場」です。前日の2019年12月9日のニューヨーク株式市場では、米中貿易摩擦への懸念からダウ平均株価が下落しましたが、そんな不透明な情勢下でも個人の消費意欲は衰えを知りません。特に、愛犬や愛猫に対する支出は右肩上がりを続けており、企業の投資意欲を激しく刺激しているのです。
米国ペット製品協会(APPA)の推計によれば、2019年のペット産業における市場規模は約750億ドル、日本円にして約8兆1500億円という驚異的な数字に達する見込みです。わずか5年前と比較しても3割もの成長を遂げており、消費全体に占める割合はまだわずかですが、その成長の瞬発力には目を見張るものがあります。この勢いを受け、金融や食品といった大手企業が続々とこの「ブルーオーシャン」へ舵を切り始めています。
大手企業が狙う「ペットの健康」と新たな保険需要
象徴的な動きとして、米保険大手のメットライフは先週、ペット保険を手がけるペットファーストの買収を発表しました。2018年の米ペット保険市場は、前年比で約26%も急増しています。これまでペットの医療費は全額自己負担が一般的でしたが、高額な治療費に備えたいという飼い主の切実な願いが、ビジネスの形を変えつつあります。市場もこの動きを歓迎しており、買収発表後の同社の株価が上昇したことは、投資家の期待の表れと言えるでしょう。
食品業界でも、高級志向へのシフトが鮮明になっています。大手ゼネラル・ミルズやJMスマッカーは、相次いで高級ペットフードブランドを巨額で買収しました。ここで言う「高級」とは、単に価格が高いという意味ではなく、人間が食べるものと同等の品質を求める「ヒューマングレード」の考え方に基づいています。家族の一員であるペットに、より健康的で安全な食事を与えたいという愛情が、巨大な経済圏を突き動かす原動力となっているのです。
SNS上でも「ペットはもはや家畜ではなく、子どもと同じ」「自分の食事を削っても、愛犬には良いものを食べさせたい」といった声が溢れています。こうした「ペットの人間化」とも呼べる価値観の浸透が、従来のペットビジネスの枠組みを大きく広げていることは間違いありません。編集者である私の視点からも、この「愛」を基点とした市場の拡大は、景気後退の局面でも崩れにくい強固な防衛セクターとしての可能性を秘めていると感じます。
二大世代が支える市場の光と影
この熱狂的な市場を支えているのは、主に二つの世代です。一つは1981年から1996年生まれの「ミレニアル世代」です。彼らはデジタルネイティブであり、ネット通販を駆使してペットのために最高級のサービスを惜しみなく選択します。もう一方は「ベビーブーム世代」です。2019年時点で55歳から73歳を迎える彼らは、退職後のパートナーとしてペットを迎える傾向が強く、その膨大な人口ボリュームが市場の底上げに寄与しています。
しかし、市場が活況を呈する一方で、競争は「群雄割拠」の厳しさを増しています。2019年12月9日には、ソフトバンクグループ傘下のファンドが、苦戦していた犬の散歩代行サービスの株式を売却すると報じられました。需要が急拡大しているからといって、すべてのベンチャー企業が生き残れるわけではありません。便利さだけでなく、飼い主との深い信頼関係をいかに構築できるかが、これからの生き残りの鍵を握ることになるでしょう。
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