アパレル大手として知られるワールドが、2019年06月26日に開催予定の定時株主総会を目前に控えた2019年06月21日、驚くべき発表を行いました。それは、株主総会で決議する予定だった「取締役への賞与支給」に関する議案の一部を修正するというものです。多くの企業が株主総会の準備に追われるこの時期、開催のわずか5日前に議案の内容を変更するというのは、極めて異例の事態と言えるでしょう。
具体的に修正されたのは、取締役3名に対する賞与の支給方法についてです。当初、会社側は招集通知において「総額3000万円を支給する」と記載していました。しかし、今回の発表でこれを「3000万円を上限として支給する」という表現に改めるとしたのです。一見すると些細な言葉の違いのように感じるかもしれませんが、「必ず3000万円払う」のと「最大で3000万円(つまり減額もあり得る)」とでは、その意味合いは大きく異なります。
「修正動議」による対応と、その背景にある意図
すでに株主の手元には当初の議案が記載された招集通知が届いており、発送後の訂正は事務的にも非常に複雑です。そのためワールドは、総会当日に会場で「修正動議」を提出し、その場で出席株主の賛否を問うという荒業に出ることになりました。ここで言う「修正動議」とは、会議の進行中に、原案に対して変更を求める申し出のことを指します。通常は株主側から出されることが多いのですが、会社側が自らの案を直前で修正するために用いるケースは珍しいです。
では、なぜこのようなドタバタ劇が起きてしまったのでしょうか。会社側のIR担当者は、議案を修正して会社側に裁量を持たせる理由について、連結業績などの「定量数値以外で考慮したい項目がある」と説明しています。つまり、単に売上や利益といった数字だけで役員の評価を決めるのではなく、もっと柔軟に、数字に表れない貢献度や経営判断の質なども加味して賞与額を決定したいという意図が見え隠れします。
郵送で投票済みの株主はどうなる?混乱を招く集計ルール
今回の件で最も物議を醸しそうなのが、すでに郵送などで議決権を行使してしまった株主への対応です。ワールド側は専門家の助言に基づき、修正前の議案に「賛成」票を投じていた場合、修正議案に対しては「反対」として扱うことを決定しました。逆に、修正前に「反対」していた場合は「棄権」として扱われるとのことです。これは直感的には理解しがたいルールであり、株主にとっては「自分の意志が捻じ曲げられた」と感じかねない対応です。
SNS上でも、この発表を受けて投資家たちからは困惑の声が上がっています。「賛成が反対になるなんて聞いたことがない」「修正案に賛成したいなら総会に行けということか」「ガバナンスとしてどうなのか」といった厳しい意見が散見されます。確かに、修正案に対して明確に賛否を示すためには、平日の開催である総会現地に足を運ばなければならないというのは、多くの個人株主にとってハードルが高いと言わざるを得ません。
私自身、編集者として企業のIR活動を多々見てきましたが、今回のワールドの対応はあまりに株主軽視のそしりを免れないと感じます。役員賞与に柔軟性を持たせるという目的自体は理解できますが、招集通知発送後の変更、しかも事前投票の取り扱いが反転するというプロセスは、企業への信頼を損なうリスクが高いです。今後の総会当日の進行が大いに注目されます。
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