【2019年株主総会】過去最多54社に迫る!企業価値向上を問う「株主提案」の波とアクティビストの狙い

2019年の株主総会シーズンにおいて、株主が議案を提出する「株主提案」が企業経営に一石を投じています。この提案を受けた企業数は、2019年6月7日時点でなんと54社にも上り、前年(2018年)の42社を12社も上回って過去最多を記録したのです。今後も提案が増える可能性があり、上場企業はまさに株主からの厳しい視線にさらされていると言えるでしょう。

特に目立っているのが、投資ファンドをはじめとする機関投資家による提案の増加です。アメリカの資産運用会社ファーツリー・パートナーズや、ウルグアイのホライゾン・キャピタル・マネジメントなど、7社もの機関投資家が12社もの企業に対して提案を実施しています。こうした動きの背景には、企業が政策的な意図で互いの株を持ち合う「持ち合い株式」の減少があり、それによって株主の発言力が強まっている現状があります。投資家たちは、企業価値の向上を強く求め、保有目的が不明確な株式の売却や、利益を株主に還元するための自社株買いなどを、株主提案という形で迫っているのです。

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企業統治と株主還元を巡る攻防

株主提案の内容で中心となっているテーマは、企業統治(コーポレートガバナンス)体制の強化と、株主還元に関するものです。例えば、ファーツリー・パートナーズはJR九州に対し、自社株買いやファンドが推薦する社外取締役3名の選任、さらには経営の監督と執行を分離する「指名委員会等設置会社」への移行などを提案しました。これに対し、JR九州は「株主提案が求めるような短期的な株主還元は、将来的な成長を犠牲にする」として反対姿勢を示しています。しかし、同社株を保有する米モアブ・キャピタル・パートナーズが賛成を表明し、アメリカの議決権行使助言会社2社も賛成を推奨するなど、議論は白熱しています。

また、ウルグアイの投資ファンド、ホライゾン・キャピタル・マネジメントは、佐藤渡辺に対して発行済み株式の約1割に相当する自社株買いを提案しています。自社株買いとは、企業が市場に出回っている自社の株式を買い戻すことで、一株当たりの価値を高め、株主への還元にも繋がる手法です。さらに、「アクティビスト(物言う株主)」として知られる日本の独立系運用会社ストラテジックキャピタルは、建設会社の世紀東急工業に対し、利益剰余金を配当に回すよう求めています。これは、企業が内部に留保している利益を、株主への配当という形で積極的に還元するよう促す提案です。

企業側の迅速な対応と高まる提案の受容性

こうした機関投資家からの提案に対し、企業側は真剣な対応を迫られています。例えば、建設会社の浅沼組は、ストラテジックキャピタルから資本コストの開示を求める株主提案を受けました。資本コストとは、企業が資金を調達するためにかかる費用で、投資家が企業価値を判断するうえで重要な指標です。浅沼組は、6月の株主総会を待たず、5月の段階でファンドから求められた情報を開示しました。これは、株主の声を無視できない状況になっていることを示す好例でしょう。

日本ではこれまで、株主総会の議案はほとんどが会社側からの提案で、一部の個人株主による、時に野村ホールディングスに「社名を野菜ホールディングスに変更する」といったような、乱用的な提案が問題となることもありました。しかし、投資家向け広報(IR)支援会社のアイ・アールジャパンのデータによると、2019年3月に開催された12月期決算企業の株主総会では、6社に対して株主提案があり、そのうち帝国繊維の取締役選任議案など2つの株主提案で株主の賛成率が2割を超えたとのことです。

アメリカでは株主提案はごく一般的で、近年は環境や社会問題への対応を求める提案も増えており、その流れが日本にも波及しつつあります。日本の機関投資家も、議案ごとの賛否の結果を開示する動きを強めています。野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員も、「株主提案が受け入れられる余地は広がるだろう」と指摘しており、株主の意見が企業経営により反映される時代へと確実に変化していると言えるでしょう。企業の皆様におかれましては、株主の声に耳を傾け、中長期的な企業価値向上に向けた対話を深めることが、より一層重要になってくるでしょう。

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