2019年6月17日、世界の不動産市場で長らくブームを牽引してきた**「中国マネー」の勢いに、急速な減速が見られるという衝撃的な状況が明らかになりました。特にアメリカ合衆国への不動産投資額は、2019年1月~3月期で前年同期比から実に7割も減少しており、その退潮ぶりが顕著になっています。この現象は、もはやアメリカだけに留まらず、ヨーロッパやオーストラリアといった主要な地域にも広がっており、世界的な不動産ブームの大きな変調を物語っていると言えるでしょう。
ニューヨークに拠点を置く米調査会社リアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)のデータによると、一定額以上の不動産取引を集計した結果、2018年中に中国の投資家や企業が世界の主要地域で不動産を購入した総額は、およそ230億ドル(約2兆5000億円)となり、これは前年と比べて46パーセントもの大幅な減少を記録しています。中国マネーによる海外不動産への投資は、2012年以前は100億ドル未満の水準でしたが、2016年には425億ドルにまで急増し、2017年もほぼ横ばいを保っていました。この勢いの源泉は、中国人民元の切り下げや中国株のバブル崩壊といった国内経済の不安定化を受け、企業や富裕層が資産を海外へ振り向ける動きが活発化したことにあります。安邦保険集団や海航集団(HNAグループ)のような巨大な企業体が、高級ホテルや高層ビルを積極的に買い上げる姿は、この時期の象徴的な光景でした。
しかし、この流れは2017年後半以降、一転してしまいました。RCAのシニア・バイスプレジデントであるジム・コステロ氏は、中国当局が人民元の下落を食い止めるために資本規制を強化し、企業債務の削減を推進するために投資制限を厳しくしたことが主な要因であると指摘しています。つまり、投資熱の低下は、中国政府による「資本の流出を防ぐための引き締め策」がダイレクトに影響を及ぼしていると言えるでしょう。この資本規制という金融政策的な重しに加え、2018年春から激しさを増した米中貿易戦争**という政治的・経済的な対立も、アメリカへの投資を躊躇させる心理的な要因として作用しているのは間違いありません。
急増する売却と広がる中国マネーの退潮
投資の減速だけでなく、保有物件の売却も急速に増加している状況です。例えば、多額の債務を抱え、中国政府から海外投資を抑制するよう圧力を受けている海航集団は、2018年にアメリカ国内で5件、総額15億ドルに上る物件を手放しました。また、2018年に中国政府の管理下に置かれた安邦保険集団も、イギリスの有力経済紙フィナンシャル・タイムズの報道によると、保有する複数のアメリカの高級ホテルの売却交渉に入ったとされており、巨大グループによる**「資産の現金化」が加速していることが分かります。これは、かつて世界を席巻した中国マネーが、「買い手」から「売り手」へと立場を変えつつあることを示唆しており、市場に与えるインパクトは計り知れないでしょう。
この中国マネーの退潮は、他の地域でも顕著です。オーストラリアでは、当局が過熱防止のために外国人向けの購入規制を導入したことも影響し、住宅価格の下落に直面しています。現地のシドニーの業者は「中国の購入者が激減した」と明かしており、オーストラリア外国投資審査委員会のデータでも、2018年6月までの1年間に認可された中国からの不動産投資額は、前年同期比で17パーセント減の約126億豪ドルとなっています。また、カナダでも、中国系移民が多く、ホテルや高級住宅への投資熱が高まっていたバンクーバーやトロントなどで、中国勢の購入が急激に減少しており、その影響はグローバル規模**で拡大しているのです。
世界の主要市場で、不動産バブルの引き金の一つとなっていた中国マネーの急減速は、世界経済の成長鈍化や、米中対立の長期化といった様々な要因が複雑に絡み合って生じています。国際社会の安定に大きな影響を及ぼすこれらの要因が解消されない限り、不動産市場における中国のプレゼンスは縮小し続けるでしょう。これは、世界の不動産市場が新たなフェーズに突入したことを意味しており、投資家や市場関係者は、これまでの常識にとらわれず、慎重な動向分析が求められる局面だと強く感じています。

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