水質改善が不漁を招く?大阪湾・瀬戸内海で始まった「きれいすぎる海」への逆転発想プロジェクト

2019年12月11日現在、大阪ベイエリアが劇的な変貌を遂げる中で、私たちの身近な海に異変が起きています。かつて「死の海」と呼ばれた大阪湾や瀬戸内海は、長年の努力によって透明度を取り戻しました。しかし、皮肉にもその「美しさ」が、魚たちが姿を消す原因になっているかもしれないのです。特に淡路島以東の大阪湾では、春の風物詩であるイカナゴ漁が2019年3月5日の解禁からわずか3日で休漁に追い込まれるという、衝撃的な事態に見舞われました。

この深刻な不漁の背景として、専門家の間では「海がきれいになりすぎた」という指摘が急浮上しています。SNS上でも「海が透き通っているのに魚がいないのは悲しい」「環境保護の定義が変わる節目かもしれない」といった困惑の声が広がっており、従来の環境対策は大きな転換点を迎えているようです。そこで兵庫県は、全国に先駆けて「栄養豊かな海」を取り戻すための、極めて珍しい挑戦をスタートさせました。

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あえて下水を活用する?窒素供給による生態系の再生

兵庫県が注目したのは、植物プランクトンの成長に欠かせない「窒素」などの栄養分です。これまでは赤潮などの被害を防ぐため、工場や家庭からの排水に含まれる窒素量を厳しく制限してきました。しかし、エサとなるプランクトンが減少したことで、食物連鎖が崩れてしまったのです。この状況を打破するため、県は独自の水質目標を設定し、2018年秋からは県内3カ所の下水処理場において、あえて排水基準を緩和する異例の運用を開始しました。

具体的には、明石市の二見浄化センターなどで、これまで1リットルあたり年間平均20ミリグラムに抑えていた窒素の排出量を、冬から春にかけては40ミリグラムまで引き上げています。国の基準では全窒素の上限値が厳格に定められていますが、兵庫県は瀬戸内側で0.2ミリグラムという「下限値」を設けました。つまり、一定以上の栄養が海に残るようにルールを変えたのです。これは、守るべきは「透明度」ではなく「生命の循環」であるという強い決意の表れと言えるでしょう。

多角的な視点で守る「豊かな海」の未来

もちろん、不漁の原因は一つではありません。地球温暖化に伴う海水温の上昇や、魚の産卵場所となる干潟の減少、さらには乱獲といった複数の要因が複雑に絡み合っています。また、世界的な課題となっているプラスチックごみによる海洋汚染への対策も、2019年12月11日の今、まさに急務となっています。水質を管理するだけでは不十分であり、海を取り巻く環境全体を包括的に見守る、多角的なアプローチがこれまで以上に求められているのです。

私自身の見解としては、この「海を適度に汚す(栄養を与える)」という試みは、人間中心の浄化思想から、自然本来の動的なバランスを重視する思想へのパラダイムシフトだと感じます。かつての公害を克服した私たちが、次に挑むのは「豊かさと美しさの共存」です。単に見た目がきれいなだけの海ではなく、多種多様な生命が躍動する「生きた海」を次世代に引き継ぐために、私たちは今、科学的な知見に基づいた新たな試行錯誤を続けるべきなのです。

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