建設業界の「巨人」とも言える太平洋セメントが2019年11月12日、同年4月から9月期までの連結決算を発表しました。その内容は、最終的な儲けを示す純利益が前年同期と比べて7%も減少し、162億円にとどまるという厳しい数字です。華々しい2020年の東京五輪を前に、資材需要は早くも曲がり角を迎えていることが浮き彫りとなりました。SNS上では「五輪が終わる前から既にこの状況なのか」「建設コストの上昇が止まらない」といった、将来の景気動向を不安視する声が次々と上がっています。
今回の減益をもたらした最大の要因は、東京五輪に向けた関連施設建設の山場が過ぎたことに伴う「反動減」にあります。これまではスタジアムやインフラ整備のためにセメントや生コンクリートが飛ぶように売れていましたが、その特需が落ち着きを見せ始めました。専門用語で「ピークアウト」と呼ばれるこの現象は、需要が頂点に達して減少に転じることを指します。さらに、現場の人手不足によって工事のスケジュールが遅延していることや、トラック運転手の不足による物流コストの高騰も、企業の利益を大きく圧迫する形となりました。
具体的な事業環境を振り返ると、売上高は前年同期比2%減の4313億円という結果です。かつて群馬県で進められていた八ツ場ダムのような、国家レベルの巨大プロジェクトが完了した影響も無視できません。日本国内全体での販売量は3%減少しており、特に同社が強固な地盤を持つ関東地区での落ち込みが激しいようです。東海地区においても、火力発電所関連の工事需要が一段落したことが響きました。かつての「建設ラッシュ」の勢いに陰りが見えている事実は、投資家や業界関係者にとっても大きな衝撃といえるでしょう。
不調は国内にとどまらず、期待されていた海外事業でも誤算が生じました。主要市場であるアメリカの西海岸において、季節外れの天候不順が続いたことで建設作業が思うように進まず、販売量が伸び悩む事態に陥ったのです。結果として、本業の儲けを示す営業利益は18%減の224億円と、二桁の落ち込みを記録しました。世界的な気象変動や地域ごとの需要変動が、これほどまでに巨大企業の経営に直接的な打撃を与えるという現実は、グローバルビジネスの難しさを改めて物語っているのではないでしょうか。
同日の記者会見で大橋徹也取締役常務は、シェアの高い関東エリアで五輪需要の反動が想定より早く現れたことに、驚きを隠せない様子でした。私自身の見解としても、単なる「需要の減少」以上に、人手不足という構造的な問題が企業の成長を阻害している点は非常に深刻だと感じます。モノを作る力があっても、運ぶ人や建てる人がいなければ利益は生み出せません。こうした国内の販売不振を受け、同社は2020年3月期の通期業績予想を下方修正しました。通期の純利益は3%減の420億円を見込んでおり、慎重な舵取りが続く見通しです。
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