日本のビジネス界において「継続」は最大の美徳の一つですが、今まさに注目を集めているデータがあります。帝国データバンクが2019年11月に実施した最新の調査によれば、創業100年を超える「老舗企業」の割合で、山形県が全国第2位にランクインしました。1位の京都府が約20社に1社の割合(4.8%)で老舗を輩出しているのは有名ですが、山形県も同じく4.8%という驚異的な数値を叩き出しています。この結果に対し、SNSでは「山形の底力がすごい」「派手さはないが信頼できる県民性」といった称賛の声が相次いでいます。
山形県内の老舗企業は、宿泊業や伝統ある酒造、生活に密着した燃料小売業など多岐にわたります。例えば、米沢市に拠点を置く小嶋総本店は、安土桃山時代の1597年に創業し、現在は24代目の当主がその暖簾を守り続けています。また、伝統工芸である「山形鋳物」の技術を現代の自動車部品製造に応用するなど、古き良き伝統を維持しながらも、時代の変化に合わせた柔軟な経営判断が光っています。こうした「不易流行」の姿勢こそが、長寿企業の共通点だと言えるでしょう。
堅実な県民性と、起業文化という新たな課題
なぜ山形にはこれほどまでに老舗が多いのでしょうか。紅花商人の歴史を汲む山形銀行の長谷川吉茂頭取は、江戸時代からの交易で培われた「家業を大切に守り抜く」という非常に堅実な気質を理由に挙げています。ここで言う「堅実」とは、無謀な拡大を避け、信頼を第一とする商いの姿勢を指しています。東北や北陸といった雪国に共通して見られる、忍耐強く着実な歩みが、100年という長い歳月を支える土台となっている事実は、短期的な利益を追い求めがちな現代社会への重要な示唆を含んでいるはずです。
一方で、この「守りの強さ」は裏返せば「新しい挑戦への慎重さ」にも繋がっているようです。実は、老舗比率が高い山形県や新潟県は、新しい会社が誕生する「開業率」が全国的に見ても低い水準に留まっています。山形大学の小野寺忠司教授は、地域の活力を維持するためには、伝統を守るだけでなく「起業」が不可欠であると説いています。伝統がどっしりと根を張っているからこそ、そこに新しい種をまく若者の情熱が加われば、地方経済はよりダイナミックに進化していくのではないでしょうか。
2019年12月02日現在のデータが示す通り、山形県は間違いなく日本を代表する「サステナブル経営」の先進地です。しかし、既存の枠組みに頼るだけでは、これからの激動の時代を生き抜くのは困難です。老舗が持つ知恵やリソースを、若者の斬新なアイデアやテクノロジーと掛け合わせるような「新旧融合」の仕組みづくりが急務だと感じます。100年の歴史に敬意を払いつつ、次の100年を創るスタートアップを全力で応援する空気感が醸成されることを切に願っています。
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