旅行の醍醐味といえば宿泊先でのひとときですが、理想のホテル像は国によって驚くほど異なるようです。世界最大級の旅行サイトを運営するエクスペディア・ジャパンが、2019年12月13日までに実施した興味深い調査結果を発表しました。世界23カ国の男女1万8237人を対象としたこの大規模アンケートからは、日本人が抱く「おもてなし」の価値観と、海外ゲストが求める「バカンス」のあり方の決定的な違いが浮き彫りになっています。
調査によると、日本人がホテル選びで最も熱視線を送るのは「客室内の充実度」です。具体的な項目では、無料Wi-Fiが84%と圧倒的な支持を集めたほか、室内冷蔵庫や無料アメニティ、さらには軽食サービスといった細やかな配慮を重視する声が目立ちました。SNS上でも「部屋から一歩も出ずに快適に過ごせるのが最高」「アメニティの充実度は満足度に直結する」といった声が多く、日本人はプライベート空間である「部屋」の快適さを追求する傾向にあるようです。
一方で、海外に目を向けると視点は一気に「共用スペース」へと広がります。例えば美食の国フランスでは、ホテル内のバーやレストランを重視する人が84%に達し、世界一の数字を記録しました。また、メキシコでは89%もの人がプールの有無を優先しており、日本の23%という数字と比較すると、驚くほどの温度差があることがわかります。彼らにとってホテルとは単なる寝床ではなく、施設全体を使い倒して楽しむ「社交と遊びの場」なのでしょう。
国ごとの「譲れないこだわり」と日本人の価値観
予約の際に重視するポイントでも、お国柄が色濃く反映されています。日本、イタリア、韓国など各国のデータを紐解くと、旅に求める「景色」の意味さえ異なって見えてきます。韓国では89%の人が「部屋からの眺望」を重視しており、美しい景色を独占することに強いこだわりがあるようです。一方、デザインの国・イタリアでは「部屋のユニークさ」を求める声が88%と高く、画一的な設備よりもその土地ならではの個性を愛する姿勢が伺えます。
ここで注目したいのが、日本人の「家族連れへの配慮」に対する意識の低さです。世界平均では66%が家族向けサービスを重視していますが、日本人は38%に留まりました。これは日本人が「ホテルは静かに過ごす場所」と考えている表れかもしれません。しかし、インバウンド需要が加速する現在の状況を鑑みれば、今後は「家族で楽しめる屋外スペース」や「ユニークな体験」を提供することが、海外ゲストを惹きつける鍵になるのではないでしょうか。
今回の調査結果は、私たちが当たり前だと思っている「良いホテルの条件」が、実は世界標準では非常にユニークであることを教えてくれました。価格や立地、無料Wi-Fiが世界共通の3大要素であることは間違いありませんが、その一歩先にある「付加価値」こそが旅の記憶を彩ります。宿泊施設側は、ターゲットとする国籍に合わせて設備の優先順位を見極めることが、これからの令和時代を生き抜くための必須戦略となるでしょう。
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