世界中が固唾を呑んで見守っていた米中両国の関税合戦が、2019年12月14日、ついに歴史的な「半歩」を踏み出しました。ワシントンと北京から届いた最新ニュースによると、両政府は貿易交渉において「第1段階の合意」に達したとのことです。約1年半もの間、お互いに重い税を掛け合ってきた異例の事態は、ようやく最悪の局面を回避する見通しが立ちました。
SNS上では「ひとまずiPhoneの値上げがなくて安心した」といった消費者の安堵の声や、「トランプ大統領の選挙対策ではないか」という鋭い指摘が飛び交っています。今回の合意では、2019年12月15日に予定されていたスマートフォンなどへの追加関税が見送られることになりました。これは、私たちの生活に直結するデジタルデバイスの価格高騰を食い止める、極めて大きな決定といえるでしょう。
大統領選と経済減速が生んだ「打算の握手」
なぜこのタイミングで歩み寄りが実現したのでしょうか。そこには両国の切実な内部事情が隠されています。2020年の大統領選挙を控えるトランプ政権にとって、支持基盤である中西部の農家へのアピールは欠かせません。中国がアメリカ産の農畜産品を年間400億ドルから500億ドルも購入することを約束させたのは、トランプ氏にとって最高の「勝利の証」となるはずです。
一方で、習近平指導部も背に腹は代えられない状況にありました。2019年11月の対米輸出は前年比で23%も落ち込んでおり、景気の冷え込みが深刻化しています。サプライチェーン、つまり「製品が消費者に届くまでの供給網」が東南アジアへ流出することを防ぐためにも、これ以上の関税引き上げは何としても阻止しなければならなかったのが本音でしょう。
しかし、この合意はあくまで「一時しのぎ」の側面が強いと私は考えます。今回、中国の巨大な産業補助金制度などの構造的な問題は、事実上「棚上げ」にされました。国家が特定の企業を強力にバックアップする仕組みは、自由競争を重んじるアメリカにとって受け入れがたいものですが、中国側も「国家主権に関わる」として譲歩の姿勢を見せていないからです。
ハイテク覇権争いは終わらない
今後の焦点は、2020年以降に予定されている「第2段階の交渉」へ移ります。ここで議論されるのは、5G通信や人工知能といった次世代の主導権争いです。アメリカが華為技術(ファーウェイ)などを市場から排除する動きを強めていることからも分かる通り、単なる「モノの売り買い」を超えた、テクノロジーの覇権を巡る対立はむしろ激化していくでしょう。
投資家やビジネスパーソンにとって、今回の合意は朗報ではありますが、手放しで喜ぶのは禁物です。貿易摩擦という霧が完全に晴れたわけではなく、対立の根っこは深く残されたままとなっています。編集部としては、この「休戦」がいつまで続くのか、そして私たちのビジネス環境がどう変わるのか、引き続き注視していく必要があると強く感じています。
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