2019年12月14日、物流業界が直面している「宅配危機」という高い壁に、地方自治体や交通機関が手を取り合って立ち向かう姿が鮮明になっています。秋田県由利本荘市にある羽後交通の営業所では、10月下旬のある日、路線バスが到着すると同時に慌ただしく作業が始まりました。車内から運び出されたのは、鍵付きのボックスに守られた「ゆうパック」や郵便物の数々です。これを待ち構えていた日本郵便のスタッフが手際よく配送車へと積み替えていく光景は、まさに新しい物流のあり方を象徴しているでしょう。
羽後交通がJR象潟駅と由利本荘市を繋ぐ32キロメートルの路線で、本格的に「貨客混載(かきゃくこんさい)」を開始したのは2019年2月のことでした。貨客混載とは、その名の通りひとつの車両で「旅客(人)」と「貨物(荷物)」を同時に運ぶ画期的な仕組みを指します。ネットショッピングの普及により、過疎地でも自宅にいながら買い物ができる利便性が増す一方で、配送を担うドライバー不足は深刻な問題となっています。SNS上でも「田舎ほど物流の維持が死活問題」「バスが荷物を運ぶのは合理的」と、この取り組みを支持する声が目立ちます。
赤字路線バスの苦境と、物流網維持のジレンマ
しかし、配送網の「救世主」と期待される路線バスも、決して安泰な経営状況にあるわけではありません。ベテラン運転手が「乗客ゼロで荷物だけを運ぶこともある」と語るように、1便あたりの平均利用者はわずか数人程度にとどまっているのが現実です。羽後交通全体で見ても、利用客は1969年のピーク時から17分の1にまで激減しており、路線の8割以上が赤字という厳しい経営を強いられています。人を運ぶ役割そのものが揺らいでいる今、物流を支える基盤が崩壊しかねない危機的状況にあるといえるでしょう。
秋田県内の他社でも、2018年に大手宅配業者と連携を模索しましたが、運行ダイヤの調整が難航して断念した経緯があります。さらには乗客減少と深刻な人手不足により、2020年9月末をもって廃止が決定した路線も存在します。「人を運ぶ基盤が失われれば、荷物を届けるどころではない」という現場の切実な声には、地方インフラの限界がにじみ出ています。単なる効率化だけでは解決できない、地域コミュニティそのものの存続に関わる構造的な課題が、ここには潜んでいるのではないでしょうか。
住民が配送を担う!鳥取県大山町が挑む新しい共助の仕組み
こうした苦境に対し、鳥取県大山町では「住民の力」を借りるという大胆な一歩を踏み出そうとしています。町営のデマンドバス(予約制バス)を軸に、地域住民が自ら荷物の集荷や配送を担う実証実験が2019年度中に始まる予定です。拠点の公民館などで荷物を降ろし、そこから先は町内会の担当者が各家庭へ届ける仕組みとなっています。将来的にはこの活動に報酬を支払うことで、地域の活力を取り戻す狙いもあります。官民だけでなく「住民」が加わるこのモデルは、持続可能な地域社会への大きなヒントになるはずです。
私個人の見解としては、この「貨客混載」や住民参加型の配送は、単なるコスト削減策ではなく、地域住民同士の「見守り」や「繋がり」を再構築する絶好の機会だと感じています。個人情報の保護といった解決すべき技術的な課題は確かに存在しますが、お互いが助け合うことで生活インフラを守るという姿勢は、今後の日本全体における過疎化対策のモデルケースとなるでしょう。物流の危機を、地域コミュニティを再生させるための転換点に変えていけるかどうかが、今まさに試されているのです。
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