日本国内で「起業」の二文字が日常的に飛び交う昨今ですが、2019年9月5日に公表されたデータは、私たちの直感とは少し異なる結果を示しています。国や自治体が手厚い創業支援策を打ち出している一方で、2018年度の全国の「開業率」は4.4%にとどまり、前年度から1.2ポイントも大幅に低下してしまいました。せっかくの支援が空回りしているようにも見えますが、実はこの数字の裏には統計上の複雑な事情が隠されているようです。
そもそもこの「開業率」とは、厚生労働省がまとめる雇用保険事業年報をベースに算出される指標を指します。雇用保険、つまり従業員を新たに雇い入れて保険の手続きを行った事業所が「開業」とみなされる仕組みです。SNS上では「最近はITベンチャーやフリーランスが増えているのに、なぜ数字が下がるのか」といった疑問の声が目立っています。実際に街を歩けば新しいカフェやIT企業を頻繁に見かけるため、統計との乖離を感じる人が多いのでしょう。
専門的な視点でこの乖離を分析すると、現在の算出方法が「人を雇うこと」を前提としている点に大きな課題が見えてきます。近年はデジタル化の進展により、従業員を抱えずにクラウドソーシングなどを活用して一人で事業を営むスタイルが一般化しました。こうした労働集約型ではない新しいビジネスモデルが、雇用保険を基軸とした従来の統計では捕捉しきれていない可能性は極めて高いと推測されます。
デジタル時代の起業実態を映し出せない統計の限界
SNSのタイムラインでは「法人を設立しても、役員だけで運営していればこの数字にはカウントされないはず」といった鋭い指摘も散見されます。まさにその通りで、2018年度のデータが示す低下は、必ずしも日本人の挑戦意欲が減退したことを意味するわけではないでしょう。むしろ、固定費を抑えてスマートに起業する層が増えたことで、旧来の物差しでは測れない「ステルス型の起業」が水面下で増殖しているのではないでしょうか。
私個人の見解としては、国や自治体は数字上の開業率に一喜一憂するのではなく、起業の中身や質を重視した新たな評価基準を設けるべきだと考えます。雇用を生むことだけが企業の価値ではなく、革新的なサービスで社会の利便性を高めることも同様に重要です。統計上の数字が下がったからといって支援の手を緩めるのは時期尚早であり、むしろ変化する起業のカタチに寄り添った柔軟なサポート体制の構築が求められています。
現行の算出方法が実態にそぐわない面を抱えている以上、この4.4%という数字だけで日本の活力を判断するのは早計と言わざるを得ません。2019年9月5日現在の状況を鑑みると、統計の「定義」そのものをアップデートする時期に来ているのは明白です。起業家の熱意を正しく評価し、次世代のビジネスを育む土壌を作るためには、まずは現実を正確に映し出す鏡を用意することから始めるべきではないでしょうか。
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