オーストラリア政府は2019年12月16日、最新の経済・財政見通しを発表しました。この中で、2019年度(2019年07月01日から2020年06月30日)の実質経済成長率が2.25%に下方修正されています。当初の予想であった2.75%から0.5ポイントの引き下げとなり、堅調だった豪州経済に陰りが見え始めた形です。
SNS上では、長年続いた「景気後退知らず」の神話に不安を抱く声や、日々の生活に直結する消費の冷え込みを懸念する投稿が散見されます。世界最長となる113四半期連続のプラス成長という大記録を更新中ですが、足元の数字は決して楽観視できるものではないでしょう。経済の屋台骨である家計消費の伸び悩みが、数字として顕著に現れています。
住宅価格の下落と資産価値の目減りが消費を直撃
今回の成長率下方修正の大きな要因となったのは、2017年末から続く住宅価格の下落です。家計消費の伸びは前期比でわずか0.1%増にとどまり、これは2008年10月から12月期以来の低い水準となっています。「資産効果」という言葉があるように、家の価値が下がると人々は将来への不安から財布の紐を固く結んでしまうのです。
住宅建設の減少も経済の重石となっており、政府の報告書でもこれらの要因が成長を押し下げたと分析されています。さらに、記録的な小雨による深刻な干ばつも無視できません。小麦をはじめとする農産物の輸出額は、2019年度に前年度比で8%も落ち込むと予測されています。自然災害が国家レベルの経済損失に直結している状況です。
12年ぶりの財政黒字化と今後の見通し
明るい材料として、政府は2008年度から続いていた赤字を脱却し、2019年度には50億豪ドルの財政黒字を達成する見通しを崩していません。フライデンバーグ財務相は2019年12月16日の会見で、2020年度には成長率が2.75%まで回復すると強気な姿勢を示しました。これは先進国平均を大きく上回る数字であり、政府の自負が感じられます。
しかし、市場関係者の視線は冷ややかです。大手銀行のエコノミストは、国内総生産(GDP)や消費者物価指数(CPI)といった主要指標が軒並み下方修正された事実を重く受け止めています。CPIとは消費者が購入するモノやサービスの価格変動を示す指数ですが、これが低いということはデフレ傾向にあり、経済が活力を欠いている証拠とも言えます。
編集者の視点から見れば、数字上の「財政黒字」という看板に固執するあまり、国民の生活実感と政府の予測に乖離が生じている印象を拭えません。住宅市場の冷え込みは一時的な調整かもしれませんが、干ばつという気候リスクへの対応を含め、豪州経済は今まさに真の強さが試される、極めて重要な局面を迎えているのではないでしょうか。
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