愛媛県などに主要な造船所を構える新来島どっく(本社:東京・千代田区)が、2019年6月21日に発表した2019年3月期の連結決算は、売上高の大幅な増加と純利益の減少という、二つの異なる側面を見せつけました。売上高は前の期と比べて16%増の1,158億円を達成し、造船会社としての底力を見せつけた形です。この増収を支えたのは、新しく建造・完工した船舶の増加にほかなりません。特に、鉄鉱石や穀物などを輸送するバラ積み運搬船や、液体化学薬品を運ぶケミカル船といった新造船の完工が、前年よりも7隻多い計34隻に上り、業績に大きく貢献しました。
しかしながら、この華々しい売上増の裏側で、純利益は前の期比で8%減の11億円に留まりました。好調な受注・完工とは裏腹に、利益を圧迫した主な要因は、船の建造に不可欠な資機材の価格高騰です。具体的には、船体の主要材料である鋼材や、動力源となるエンジン関係など、幅広い分野で値上がりが発生し、収益性を悪化させました。造船業界では、受注から完工までに長い期間がかかるため、契約後に原材料費が上昇すると、どうしても利益が目減りしてしまうという構造的な課題があります。
このような状況に対し、新来島どっくは製造現場の効率化を目的とした合理化設備の導入や、老朽化して性能が落ちた設備の更新といった設備投資を着実に実施しました。これは、短期的なコスト増を飲み込みながらも、中長期的な競争力を維持・強化しようとする企業努力の現れでしょう。厳しい市況の中でも、技術革新と生産性の向上を通じて、利益体質への転換を図る姿勢は非常に重要だと考えます。
決算発表後、SNS上ではこのニュースに対し、「受注が増えているのはすごい」「日本の造船業もまだまだやれる」「資材高騰は本当に大変そう」といった、売上増への期待と、コスト増による減益への同情が入り混じった反響が見られました。国内の造船業界は長らく厳しい国際競争にさらされていますが、日本の高い技術力と品質への期待は根強いことがうかがえます。
不透明な市況下での舵取りと、今後の展望
今後の見通しについて、新来島どっくの担当者は「市況の不透明な状況は続くとみられる」との認識を示しています。ここで言う「市況の不透明さ」とは、国際的な貿易量の変動、原油価格の動向、そしてなにより競合国との激しい価格競争など、船の需要と供給に影響を与える様々な要素が予測しにくい状態を指します。特に、世界経済の動向に左右されやすい造船業界にとって、未来を見通すことの難しさは深刻な課題でしょう。
私の意見としては、新来島どっくの戦略は理にかなっていると考えられます。売上を伸ばすためにバラ積み運搬船やケミカル船といった需要の高い船種を確実に完工し、同時に、利益を確保するための生産効率の改善を進めています。この「攻め」と「守り」のバランスこそが、不確実性の高いこの時代において、日本が誇る造船技術を未来へ繋ぐ鍵となるのではないでしょうか。2020年3月期の業績においても、この地道な努力がどのような形で結実するのか、造船業界の動向を注視していく必要があります。
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