【2020年問題】海運の環境規制が引き起こす運賃上昇の波紋!BAF導入で荷主の理解とSNSの反応は?

2020年1月1日から国際海事機関(IMO)による船舶燃料の硫黄酸化物(SOx)排出規制が大幅に強化されることを受け、海運業界では運航コストの上昇が避けられない状況です。この規制強化は、単なるコスト増ではなく、海運を取り巻く環境そのものを変える大きな転機として捉えられています。2019年春の運賃交渉では、「環境の変化に伴う値上げを受け入れてほしい」と荷主に対して説明する海運会社の営業担当者が非常に目立っていました。

特に、雑貨や自動車部品などを輸送するコンテナ船の主要航路では、毎年春に荷主と1年間の運賃を取り決めるのが通例です。しかし、硫黄含有量が0.5%以下に制限される「適合油」などの新たな船舶燃料は、その指標価格がまだ確立されていません。このため、海運各社は2019年度において、具体的な値上げ額よりも、規制によるコスト上昇分を確実に運賃へ転嫁するための枠組み作りに注力しました。この動きは、環境対策の必要性から生じたコストを、サプライチェーン全体でどう分担していくかという、重要な課題を浮き彫りにしています。

そこで各社が着目したのが、「バンカー・アジャストメント・ファクター(BAF)」と呼ばれる制度の活用です。これは、もともと海運業界にあった、燃料価格の変動分を運賃とは別枠で調整する割増料金の仕組みで、原油高騰などによる船舶燃料の値上がりを運賃に反映しやすくするためのものです。このBAFは、航空業界でいうところの「燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)」と似た考え方だと理解していただけるでしょう。長期契約の輸送では既に導入されていることが多い仕組みですが、集荷競争が激しいコンテナ船などでは形骸化している例も多く見受けられました。

このBAFの導入について、ほとんどの荷主は受け入れている模様です。ある電機メーカーの担当者によると、「環境を守るためのコスト負担は、やむを得ないもの」との認識を示しています。これは、企業の社会的責任(CSR)や、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮する投資)の普及により、取引先の環境対応に無関心ではいられない時代背景が大きく影響していると考えられます。私見ですが、この環境意識の高まりは、海運会社がコスト転嫁を進める上での追い風となっていることは間違いないでしょう。

一方で、BAFの具体的な算定方法が海運会社ごとに異なるため、利用する荷主側には戸惑いも見られました。ある電子機器メーカーは、「計算式の中に、我々には開示されない情報が含まれている」との指摘もしています。円満な合意を得るため、荷主側が提示した計算方法でBAFを算出するケースもあり、透明性の確保が今後の課題と言えるでしょう。しかしながら、日本郵船の担当者が「荷主の理解が進んでいる」と述べているように、海運業界全体の取り組みとして、規制対応への機運は高まっていると推察されます。

SNS上でもこの規制強化と運賃上昇については多くの反響があります。「いよいよ海運も環境コストの転嫁が本格化してきた」「地球のために必要な投資だ」「結局、最終的には消費者に回ってくるのだろう」といった、さまざまな意見が寄せられています。特に「IMO 2020」や「適合油」といった専門用語とともに、コスト負担の是非や、日本経済への影響について論じる投稿が目立っており、この問題への関心の高さがうかがえます。

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🚢規制強化は船舶需給の引き締まりと市況への影響も

今回の環境規制強化は、運航コストの上昇だけでなく、船舶の需給バランスにも影響を及ぼし始めています。規制に対応するため、重油から硫黄分を取り除く装置である「脱硫装置(スクラバー)」を設置する大型船などは、ドックに約1カ月間入って工事を行う必要があります。その期間、市場で利用可能な船の数が減少するため、需給が引き締まることにつながります。

また、割高になる新たな適合油の消費を抑えるため、船舶が速度を落として航行する、いわゆる「スロー・スチーム」が増加する可能性も指摘されています。航海に要する時間が増える分、同じ輸送量を行うために必要な船の数が増えることになります。結果として、船の手配が難しくなれば、海運市況の相場が上昇する大きな要因となるでしょう。市場関係者の間では、環境規制への対策が本格化する2019年秋以降、「海運市況への上昇圧力が強まるだろう」との見方が多く聞かれるようになってきています。

石炭や鉄鉱石を運ぶばら積み船など、数年以上にわたる長期輸送契約を結ぶケースでは、既にBAFの適用が契約に盛り込まれている例が多く存在します。これらの契約でも、計算に用いる燃料油の種類が限定されている場合、高価な軽油などを混ぜて作られる「適合油」に対応させるよう、契約内容を見直す動きが見られています。国際的な環境規制が、日本の海運、そして世界の物流のコスト構造にまで、深く影響を及ぼしていると言えるでしょう。

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