2019年12月18日、日本の司法史に刻まれる重要な審判が東京地方裁判所で下されました。ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之氏から性暴力を受けたとして損害賠償を求めていた訴訟にて、鈴木昭洋裁判長は伊藤さんの訴えを全面的に認める判決を言い渡したのです。
裁判所は、当時、酩酊状態で意識を失っていた伊藤さんに対し、山口氏が合意のないまま性行為に及んだという事実を認定しました。この結果、山口氏には330万円の支払いが命じられています。かつて刑事事件としては不起訴となった事案が、民事訴訟という場で「性暴力」として明確に認められた意義は極めて大きいと言えるでしょう。
司法が判断した「証言の信憑性」と社会への影響
今回の判決において、鈴木裁判長は両者の主張の信頼性を厳しく精査しました。伊藤さんについては「被害をあえて虚偽申告する動機が見当たらない」と評価した一方で、山口氏の説明に関しては、核心となる部分で不合理な変遷が見られ、信用性に重大な疑念があるとはっきり指摘しています。
また、山口氏が「名誉を傷つけられた」として1億3000万円という巨額の賠償を求めた反訴については、裁判所はこれを棄却しました。伊藤さんが自身の体験を公表したことは、性犯罪被害者を取り巻く厳しい社会環境を改善しようとする「公益目的」であると認められ、名誉毀損には当たらないと判断されたのです。
このニュースが流れると、SNS上では「勇気ある行動が報われた」「日本の司法がやっと動いた」といった感動の声が溢れ、世界的なハッシュタグ運動である「#MeToo」の精神を体現する出来事として大きな注目を集めています。性暴力被害者が声を上げにくいとされる日本社会において、この判決は希望の光となるはずです。
2015年4月のあの日から続く闘いと編集者の視点
事件の始まりは、2015年4月3日にまで遡ります。当時、就職先の相談をするために山口氏と会食した伊藤さんは、途中で意識を失い、宿泊先のホテルで被害に遭いました。その後、2017年10月に実名で著書を出版し、自らの苦しみを社会に問い続けた彼女の覚悟は、計り知れないほど深いものだったと察します。
メディアに携わる者として、権力に近い立場にあった元記者という存在がこうした行為に及んだことは、到底許されることではありません。TBSテレビも「元社員の在職中の事案であり遺憾」とのコメントを出していますが、組織としての責任や体質についても、私たちは厳しい目を向けていく必要があるでしょう。
ここで解説しておきたいのは「民事訴訟」と「刑事手続き」の違いです。今回は検察が「不起訴(罪を問わないこと)」としましたが、民事ではより広い証拠から「不法行為」の有無を判断します。たとえ刑務所へ送ることはできなくても、被害者の尊厳を守るための司法の盾が機能したことは、今後の性教育や法整備に一石を投じるに違いありません。
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