家電業界に激震が走るニュースが飛び込んできました。パナソニックが、2021年9月24日の稼働を目指し、中国に16年ぶりとなる家電の新工場を建設することを発表したのです。現在、米中摩擦の影響で多くの企業が生産拠点の移転を検討するなか、あえて中国市場へ深く根を張るという今回の決断。これは単なる工場の増設ではなく、同社が抱く強い危機感と、かつての「日の丸家電」の誇りを取り戻すための背水の陣とも言えるでしょう。
新工場が建設されるのは、中国の浙江省嘉興市です。約45億円という巨額の投資を行い、電子レンジや炊飯器といった調理家電の生産に特化します。SNS上では「今さら中国?」「リスクが高いのでは」という慎重な意見も見られる一方で、「パナソニックの品質が現地ニーズと合致すれば最強」「ブランド力はまだ健在」といった期待の声も多く、インターネット上でも非常に高い関心を集めているトピックです。
今回の戦略で注目すべきは、現地での「開発機能」を強化している点です。これまでのように日本で決めた仕様を海外へ持ち込むのではなく、中国の消費者の好みやトレンドを即座に反映させる体制を整えました。ここで言う「嗜好(しこう)」とは、食べ物やデザインに対する個人の好みのことですが、変化の激しい中国市場において、このスピード感こそが成功の鍵を握る「ローカライゼーション」の真髄と言えます。
構造改革の遅れを挽回できるか?世界シェアへの挑戦
正直なところ、現在のパナソニックの家電事業は楽観視できる状況ではありません。2020年3月期の売上高営業利益率は2.8%に留まる見通しで、世界水準の7.5%からは大きく水をあけられています。かつて世界を席巻した姿は影を潜め、現在はハイアールやサムスンといった中韓メーカーが市場のトップを走っています。ライバルの背中が遠のくなか、収益性の低いテレビ事業などの構造改革を急ぐ必要があります。
私は、今回の新工場設立を「過去の成功体験からの脱却」を象徴する英断だと評価しています。かつては日本の本社へ事細かに指示を仰ぐ体制だったそうですが、現在は現地に大きな権限を与える「中国・北東アジア社」を立ち上げ、意思決定を加速させています。優秀な現地の才能を活かし、現地のスピード感で戦う。この「現地主導」のスタイルこそ、官僚的な組織から脱却し、再び成長軌道に乗るための唯一の道ではないでしょうか。
パナソニックと中国の間には、1978年に最高指導者の鄧小平氏と創業者・松下幸之助氏が会談して以来、40年以上にわたる深い絆があります。この歴史的な信頼関係と「ソンシャー」というブランドイメージは、他社には真似できない大きな資産です。中国で成功モデルを築き上げ、それをアジア全域へ展開する。この壮大なロードマップの第一歩が、2019年12月7日に示されたこの新戦略なのです。
しかし、敵もさるもの。ハイセンスが東芝のテレビ事業を買収するなど、中国勢は日本市場の攻略も着々と進めています。国内の守りを固めつつ、巨大な中国市場で勝利を掴めるのか。残された時間は決して多くありませんが、老舗の意地を見せてくれることを期待せずにはいられません。私たち消費者に、また「ワクワクする家電」を届けてくれる日が待ち遠しいですね。
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