テレビ番組などでもお馴染みの俳人、夏井いつきさんが、自身の死生観と俳句への情熱を瑞々しい感性で綴ってくださいました。2019年12月19日、冬の寒さが身に染みる季節に届けられたこのメッセージは、私たちが何気なく過ごす日々の価値を再発見させてくれます。かつて「脳天気な女子高生」だったと自称する彼女が、同級生から投げかけられた「人間は80年かけてゆっくり死んでいく」という衝撃的な言葉。その記憶は、大人になった今も色褪せることなく彼女の根底に流れています。
大学時代に出会った『平家物語』の講義も、彼女の人生に大きな影響を与えました。「諸行無常(しょぎょうむじょう)」という言葉は、この世のすべては絶えず変化し、同じ状態に留まることはないという仏教的な真理を指します。また「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」とは、勢いのある者も必ず衰えるという厳しい道理です。一見すると、すべてが滅びへ向かう虚無的な思想に思えますが、夏井さんは恩師の言葉を通じて、その裏側にある「正の無常」という希望を見出しました。
「滅びゆく分だけ、常に新しいものが生まれる」という視点は、絶望を再生の喜びへと変えてくれます。23歳だった1980年代、お父様を胃癌で亡くされた経験を経て、夏井さんは「生と死」の循環を身をもって実感されました。こうした深い洞察があるからこそ、彼女の言葉には重みと温かさが宿っているのでしょう。SNS上でも「無常観の捉え方が変わった」「当たり前の毎日が愛おしくなる」といった感動の声が広がっており、多くの読者の心を揺さぶっています。
心のバリアフリーを実現する「おウチde俳句」という生き方
俳句の種を蒔き続けて30年。夏井さんが今、最も力を注いでいるのが「おウチde俳句」という活動です。これは、病気や介護、あるいは育児などで外出がままならない方々でも、自宅にいながら俳句を楽しめるようにという願いから生まれました。たとえ一歩も外に出られなくても、家の中には無数の「俳句のタネ」が転がっています。日常の些細な変化を17音に留める作業は、まさに自分が今ここで「生きている」という確かな証拠になるはずです。
私は、夏井さんのこの活動こそが、現代社会における最高の「心の処方箋」であると確信しています。孤独を感じやすい環境にいる人々にとって、誰かに句を認めてもらい、褒められる経験は、何物にも代えがたい「生きる力」に繋がるからです。「おウチde俳句大賞」のようなコンテストの場があることも、表現することへの大きなモチベーションとなるでしょう。自分を表現する手段を持つことは、人生の質を劇的に向上させる素晴らしい魔法なのです。
冬の檸檬が放つ鮮やかな香りのように、厳しさの中にもハッとするような輝きを見出す力。それこそが俳句の本質であり、私たちが豊かに生きるためのヒントではないでしょうか。2019年という時代の節目において、彼女が提唱する「日常を詩にする習慣」は、忙しない毎日を送る私たちに立ち止まる勇気をくれます。皆さんも、今日という一日を小さな17音に刻んでみてはいかがでしょうか。その一歩が、きっとあなたの明日を明るく照らしてくれるはずです。
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