幼い愛児が病に倒れ、病院のベッドで横たわる姿を見るのは、親にとって身が切られるような思いでしょう。そんな中、入院中の子供に寄り添う家族が直面している過酷な現実をご存知でしょうか。2019年12月23日、東京都を拠点に活動するNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」は、看病を担う家族の心身および経済的な負担を明らかにするための大規模な実態調査を開始しました。SNS上でも「これほどまでに孤独で辛いのか」「自分の食事すらままならない」と、当事者たちの悲痛な叫びが次々と寄せられています。
本来、日本の病院は「完全看護」という原則に基づき運営されているものです。これは、患者の食事や排泄の介助、入浴といった日常的なケアのすべてを看護師や専門スタッフが責任を持って行う仕組みを指します。理屈の上では、家族は面会時間に来るだけで十分なはずなのですが、現実は大きく異なります。特に小児病棟においては、人手不足や子供の情緒的安定を理由に、親の付き添いが事実上の「前提」となっているケースが少なくありません。規則と実態の乖離が、家族を追い詰める大きな要因となっています。
簡易ベッドでの寝泊まりと栄養不足が招く家族の崩壊
付き添い生活の現実は、想像を絶するほど過酷です。多くの親は、狭い病室に置かれた簡易ベッドで夜を明かし、医療スタッフに代わって授乳や着替え、排泄の世話を24時間体制で行っています。自分の食事は売店のおにぎりやカップ麺で済ませるのが日常茶飯事で、シャワーを浴びる機会すら制限されることさえあるのです。このような不摂生と睡眠不足は、親自身の体調を著しく損なうだけでなく、精神的な孤立感を深める結果を招くでしょう。
さらに、この問題は病室の中だけでは完結しません。自宅に残された他の兄弟姉妹の育児をどう継続するかという、いわゆる「きょうだい児」の問題も深刻です。看病のために仕事を休まざるを得ず、収入が減る一方で、入院費や付き添い中の生活費が嵩むという経済的困窮も無視できません。看病する側が倒れてしまえば、子供を支える基盤そのものが崩れてしまいます。家族の献身的な愛に頼り切っている現在の医療体制は、もはや限界を迎えているといっても過言ではないはずです。
支援の輪を広げるために必要な「現状の可視化」
今回の実態調査を主導する光原ゆき理事長は、自身も子供の長期入院を経験した当事者の一人です。「完全看護という原則があるために、付き添い家族へのサポートは例外的な扱いになり、支援が不十分なまま放置されている」と彼女は強く指摘します。これまで同団体は、付き添い中の家族へ食事を提供するといった草の根の活動を続けてきました。しかし、個別の努力だけでは解決できない構造的な問題を打開するためには、データに基づいた国や自治体への働きかけが不可欠なのです。
本調査は聖路加国際大学の小林京子教授(小児看護学)との共同プロジェクトとして、2019年12月23日から2020年2月29日までの期間、公式ホームページを通じて実施されます。現場の声を数値化し、社会に突きつけることで、ようやく「家族の看病は当然」という風潮に一石を投じることができるでしょう。私は、この記事を通じて一人でも多くの人にこの実態を知ってほしいと願います。誰かが犠牲になることで成り立つ医療ではなく、家族も共に笑顔でいられる支援体制の構築こそが、今求められているのです。
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