2011年3月11日に発生した東日本大震災。この巨大地震に伴う津波は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしましたが、8年余りの時を経て、当時の津波で流された宮城県石巻市の漁船が、遠く離れた高知県の沖合で発見されたという「奇跡の漂流」のニュースが届きました。
発見されたのは、かつて石巻市の宮城県漁協北上町十三浜支所に所属していた元漁師、佐藤寅夫さん(80)の漁船「日進丸」(長さ約6.5メートル)で、今年2019年5月下旬、約900キロメートルも離れた高知県須崎市の沖合で見つかったのです。この距離と時間を考えれば、その旅路がいかに壮大であったかが分かります。
高知海上保安部の発表によると、2019年5月27日の午後、須崎市の横浪半島の南約2.3キロメートルの沖合を巡回中の高知県警の警備艇が、転覆した状態の船体を発見し、同海保に通報しました。船体には長年の漂流の証として、びっしりと貝や藻が付着していたそうです。
船体を確認した海保の潜水士は、宮城を示す「MG」と6桁の数字からなる登録番号(船舶の識別番号)を読み取り、第2管区海上保安本部へ照会したところ、これが津波で流され行方不明となっていた佐藤さんの「日進丸」であると判明しました。海保の担当者は、この船が黒潮(太平洋を流れる大規模な海流で、日本列島の南岸沿いを東へ流れる、暖かくて速い海の流れのこと)に乗って、太平洋を大きく回りながら流れ着いた可能性を指摘しており、東日本大震災の漂流物がこのように高知で見つかるのは「初めてではないか」と驚きをもって語っています。
このニュースは、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「8年も経って見つかるなんてすごい生命力だ」「900キロの旅、感慨深い」「震災を忘れてはいけないと思わせてくれる出来事」といった、船の発見に対する感動と、震災への思いを新たにするコメントが多数投稿されています。船は持ち主の元へは戻れないかもしれませんが、人々に忘れかけていた震災の記憶を蘇らせ、希望を与える存在になったと言えるでしょう。
この事実は、津波の力の凄まじさと、海流の持つダイナミックさ、そして時間の経過にも負けない漂流物の物語を雄弁に物語っています。私は、単なる漂流物ではなく、亡くなった方々の魂を乗せて、あるいは生きた証として、大海原をさまよったこの船に、強い感動と胸を打たれる思いを覚えます。この船の発見が、被災された方々にとって、少しでも心の安寧に繋がることを願ってやみません。
コメント