アジアの経済成長を力強く牽引してきた中国のスタートアップ市場に、いま大きな転換点が訪れています。新興企業の情報に精通する36Krの集計によりますと、2019年01月01日から06月半ばまでの資金調達額は、約3600億元(日本円で約5兆6000億円)という結果になりました。この数字は一見すると巨額に思えますが、現状のペースが2019年12月31日まで継続した場合、前年比で3割以上も落ち込む計算となり、投資熱が急速に冷え込んでいる実態が浮き彫りとなっています。
今回の調達額減少の背景には、2018年を通じて発生した世界的な株価の低迷が深く関わっています。株価が下がることで、企業に資金を供給する投資家たちの資産価値が目減りし、新しいビジネスに挑戦する企業へリスクを取って投資を行う「投資余力」が低下してしまいました。さらに、これまで中国のシェア経済(共有経済)のシンボルとして脚光を浴びてきたシェア自転車サービスなどの分野において、収益モデルの不透明さが露呈したことも、投資家が財布の紐を固く締める要因になったと考えられます。
ここで言う「シェア経済」とは、個人や企業が所有する物やサービスを、インターネットを介して他者と共有して利用する仕組みを指します。わずか数年前までは、このモデルこそが未来のスタンダードになると信じられ、莫大な資金が流れ込んでいました。しかし、2019年現在では「成長性よりも収益性」というシビアな視点が重視されるようになっています。SNS上でもこの変化は話題となっており、「これまでがバブルすぎただけで、健全な調整局面に入ったのではないか」という冷静な意見が目立っています。
編集者としての視点から言わせていただければ、この資金調達の「冬の時代」は、決してネガティブな側面ばかりではないと感じます。これまでは勢いだけで巨額の資金を集められた企業が淘汰され、本当に価値のある技術やサービスを持つ企業だけが生き残る「本物志向」の時代へ移行している証拠ではないでしょうか。多額の補助金でユーザーを囲い込む強引な手法から、持続可能なビジネスモデルへの脱皮が、現在の中国新興勢には強く求められていると言えるでしょう。
今後の注目ポイントは、この冷え込みが一時的なものに留まるのか、あるいは構造的な不況へと発展していくのかという点です。2019年後半にかけて、中国政府がどのような景気刺激策を打ち出し、スタートアップへの支援を継続していくのか、私たちは注視していく必要があります。投資の勢いが鈍化している今こそ、真に革新的なイノベーションが生まれる土壌が整いつつあるのかもしれません。引き続き、最前線の動向から目が離せない状況が続くことでしょう。
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