今、ビジネスの世界で熱い視線が注がれている「デザイン経営」という言葉をご存知でしょうか。これは単に製品の外見を美しく整えるだけでなく、デザインを企業価値を高めるための重要な経営資源として活用する戦略的な考え方です。
経済産業省が2018年に発表した報告書によれば、デザインを重視する経営が企業の競争力を引き上げ、成長の鍵となることは、もはや世界のビジネスシーンにおける常識となっています。しかし、日本の現状は少しばかり遅れをとっているようです。
知的財産を守るための「意匠権(いしょうけん)」、つまりデザインの権利保護に関する出願件数を見てみましょう。2018年の国内出願数は3万1406件にとどまっており、過去10年ほど横ばいの状態が続いています。
その一方で、アメリカや中国といった諸外国は着実に出願件数を伸ばしており、日本の存在感が相対的に薄れている懸念がありました。こうした背景を受けて、いよいよ2020年4月1日から、デザインを強力に保護するための改正意匠法が施行されます。
デジタルと空間を守る!新時代の知的財産戦略
今回の法改正における最大の注目点は、保護対象の劇的な拡大です。これまでは物品に固定されたデザインしか守られませんでしたが、これからはネットワークを通じて表示される画像や、プロジェクターで投影される画像も対象となります。
まさに現代のIoT(モノのインターネット)時代を象徴するアップデートと言えるでしょう。さらに驚くべきことに、これまで不動産であるという理由で対象外だった「建築物」や、その「内装」のデザインについても、新たに意匠権が認められることになります。
かつて、コメダ珈琲店が店舗の外観デザインを巡って争った際、当時は意匠権で対抗できず、不正競争防止法を頼りに差し止めを申し立てた事例がありました。今回の改正により、こうしたブランドの象徴である空間そのものを直接守ることが可能になります。
この変更は、欧米などの国際的な基準に足並みを揃えるものでもあります。日本企業が世界で戦うための武器が、ようやく手元に揃ったと言っても過言ではありません。この動きに対しSNSでは「ようやく空間デザインに価値が認められる」と期待の声が上がっています。
マツダの成功に学ぶ、一貫性のあるブランド構築
もう一つの大きな柱は「関連意匠制度(かんれんいしょうせいど)」の拡充です。これは、一つのコンセプトから生まれたバリエーション豊かなデザイン群を、より長期間にわたって保護するための仕組みを指しています。
これまでは、最初のデザインが公開されると、その後に派生したデザインは権利化が難しいというジレンマがありました。しかし今後は、基礎となるデザインの出願日から10年以内であれば、関連するデザインの登録が認められるようになります。
この仕組みを最大限に活用し、成功を収めているのが自動車メーカーのマツダです。彼らはコンセプトカーのデザイン思想をセダンからSUVまで全車種に一貫して展開し、見事にブランド力を復活させました。
マツダの強みは、外観の美しさだけでなく、設計思想や基盤技術までをも共通化させた点にあります。経営の中枢がデザインと機能の両輪をコントロールすることで、唯一無二の価値を生み出したのです。
創造力が未来の需要を創り出す
一橋大学の吉岡徹講師は、デザイン経営の実現には「潜在的な需要への洞察」や「感性と技術の統合」が不可欠であると語っています。あらゆる顧客との接点を通じて価値を伝える、想像力と創造力こそが求められているのです。
私は、今回の法改正は単なるルールの変更ではなく、日本企業が「価格競争」から「価値創造」へとシフトするための強力な追い風になると確信しています。法律というインフラが整った今、企業の真のクリエイティビティが試されています。
2019年12月02日現在、来春の施行に向けて各企業は準備を急いでいます。デザインを経営の核に据えることで、日本の産業が再び世界を驚かせる日が来ることを切に願っています。
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