「マザーマシン」という言葉をご存知でしょうか。これは、自動車やスマートフォンなど、あらゆる工業製品の部品を作るための「機械を作る機械」を指します。日本のものづくりを根底から支えるこの工作機械産業において、今、中部地方のメーカーたちが大きな転換期を迎えています。2019年11月22日現在、世界経済は米中貿易摩擦の長期化という厚い雲に覆われ、設備投資を控える動きが目立っています。しかし、現場の熱気は決して衰えてはいません。
SNSや業界内では「受注の落ち込みは一時的であり、次世代への投資こそが勝機」との声が多く上がっています。実際に各社は、この停滞期をあえて「体質強化の好機」と捉え、攻めの姿勢を崩していません。深刻な人手不足や人件費の高騰を背景に、工場を無人化・自動化するニーズはむしろ世界中で高まり続けているからです。不透明な情勢だからこそ、より賢く、より効率的に動く「賢い機械」への進化が、企業の命運を握る鍵となるでしょう。
スマート工場の実現と戦略的アライアンスの衝撃
業界大手のオークマは、愛知県大口町の本社工場にて2020年度にも新棟の建設に着手する計画です。ここで導入されるのは、IoT(モノのインターネット)を駆使した革新的な生産システムです。あらゆる設備がネットワークで繋がり、稼働状況をリアルタイムで把握することで、無駄のない一貫生産を目指します。電子タグを用いた部品管理により、必要な時に必要な分だけ供給するスマートな現場作りは、まさに次世代の工場の象徴といえます。
一方で、自前主義を脱却し、異業種との強力なタッグで突破口を開く動きも加速しています。DMG森精機は、精密光学技術で世界をリードするニコンとの業務提携を発表しました。また、ヤマザキマザックもファナックや三菱電機といったロボットメーカー各社との連携を深めています。私は、こうした「共創」の姿勢こそが、複雑化する顧客ニーズに応える唯一の道だと確信しています。単なる機械の販売ではなく、付加価値を提供できるかどうかが重要です。
日本工作機械工業会が2019年9月に発表した受注見通しは、当初の予想から大幅に下方修正されるなど、数字の上では厳しい冬の時代に見えるかもしれません。しかし、今回取材した中部メーカー各社の動きを見れば、それが単なる足踏みではないことが分かります。逆風の中でこそ、技術の研鑽と構造改革が進むものです。この苦しい局面を乗り越えた先に、日本の「マザーマシン」が世界を圧倒する新しい景色が広がっているに違いありません。
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