ものづくりの街として名高い大阪府八尾市で、ひときわ異彩を放つ企業をご存知でしょうか。2006年に産声を上げた「テクノグローバル」は、単なる金型製造の枠を超え、企画からデザイン、組み立てまでを一貫して行う気鋭の中堅メーカーです。創業社長の高田弘之氏は「世界に認められる企業」を掲げ、情熱を燃やしています。
現在、花粉症に悩む人々の間で密かに注目を集めているのが、2017年に発売された樹脂製ティッシュケースです。著名なデザイナーの村田智明氏とタッグを組んだこの逸品は、箱から出るティッシュを最小限に抑えることで、ホコリや花粉の付着を徹底ガードします。SNSでも「機能美がすごい」「壁掛けできるのが便利」と、その実用性が高く評価されているのです。
金型への愛が切り拓いた「ワンストップ」という理想
この商品には、継ぎ目が見えないよう金型を工夫するなど、熟練の職人技が凝縮されています。価格は4,000円余りと決して安価ではありませんが、既に累計3,000個を突破し、八尾市のふるさと納税返礼品にも選ばれました。長年「脱下請け」を夢見てきた高田氏にとって、この自社製品第1号は、まさに執念が形になった記念碑的な存在といえるでしょう。
高田氏の歩みは波乱万丈です。金型業界の市場規模が縮小し、多くの企業が海外移転や後継者不足に悩む中、氏は2006年に独立を決意しました。当初は4畳半の自宅を拠点とした設計のみのスタートでしたが、「理想の製品を自らの手で完成させたい」という強い信念から、無理を承知で工場を借り、中古の成形機を揃えて自社一貫体制を築き上げたのです。
現在のテクノグローバルは、小林製薬やコクヨといった名だたる大手企業を顧客に持ち、年商は約4億円にまで成長しました。独自の「ワンストップソリューション」は、設計から納品までの全工程を自社で完結させる仕組みのことですが、この柔軟な対応力が厳しい市場で選ばれ続ける理由です。ものづくりへのこだわりが、大手の信頼を勝ち取ったのでしょう。
ベトナム拠点と革新的な新製品への挑戦
高田氏の視線は早くから海外にも向けられていました。2014年にはベトナムへ進出し、2019年10月にはホーチミン近郊で新工場の稼働を開始しています。単なるコスト削減ではなく、現地の若者を日本で数年かけて育成し、信頼関係を築いた上で責任者に据えるという、人を中心に置いたグローバル展開は、非常に誠実で戦略的なアプローチだと感じます。
また、経営の安定化に向けて「脱下請け」の動きはさらに加速しています。斬新なデザインの壁時計や、大阪大学の研究成果を応用した2019年12月発売予定の「携帯式重金属検出装置」など、次々に新領域へ挑戦しています。120グラムという驚異的な軽さを実現した装置は、他社には真似できない技術力の証明であり、同社の未来を象徴する製品になるはずです。
不況や業界の衰退を嘆くのではなく、自らの「好き」を原動力に変え、デザインという武器を手に入れて進化を続けるテクノグローバルの姿勢は、日本の中小企業が進むべき一つの正解を示しているように思えます。2018年には出身地の福井県にも拠点を構えるなど、高田氏の飽くなき挑戦は、これからも日本のものづくりを明るく照らしてくれるでしょう。
コメント