ダムの「事前放流」で水害を防ぐ!国交省が本腰を入れる治水新時代の幕開け

私たちの暮らしを水害から守る要である「ダム」の運用が、今まさに大きな転換点を迎えています。国土交通省は2019年12月25日までに、相次ぐ台風や豪雨による深刻な被害を食い止めるため、ダムの治水機能を劇的に高めるための有識者会議を始動させました。ここで議論の中心となるのは、大雨が降る前にあらかじめ貯水量を減らしておく「事前放流」の抜本的な強化策です。

「事前放流」とは、台風などの接近が予想される際、あらかじめダムの水を流して空き容量を確保し、洪水調節の能力を最大化させる仕組みを指します。いわば、バケツを事前に空にして大雨に備える知恵と言えるでしょう。2018年7月の西日本豪雨では、愛媛県のダムで「緊急放流」が行われた後に下流で犠牲者が出る悲劇が発生しました。これを教訓に、より安全な「事前」の対策を求める声が急速に高まっているのです。

しかし、この理想的な運用には高い壁が立ちはだかっています。2019年10月時点の調査では、全国の治水ダムのうち事前放流のルールを関係者と合意できているのは、わずか1割程度に過ぎません。その大きな理由は「利水者」との調整です。利水者とは、農業や発電、水道水としてダムの水を利用する権利を持つ人々を指します。放流しすぎて水不足になるリスクを避けたい彼らとの合意形成には、膨大な時間がかかるのが現状です。

SNS上では、2019年10月に東日本を襲った台風19号の際にも「もっと早く放流できなかったのか」という疑問や「ルールが複雑すぎる」といった指摘が数多く投稿されました。専門的な運用への関心が一般層にまで広がっている証拠でしょう。今回の有識者会議では、こうした期待に応えるべく、2020年5月の対策とりまとめを目指しています。気象予測の精度向上や、利水に悪影響を与えない柔軟な放流設定が鍵を握るはずです。

編集者の視点から言えば、この議論は単なる技術論に留まらず、私たちの「命の優先順位」を問い直すものだと感じます。水という限られた資源を「使うための利水」と「守るための治水」でどう分配するか。過去の慣習に縛られず、最新の気象データを駆使した「攻めのダム運用」へのシフトは不可欠です。2020年の出水期までに、誰もが納得できる実効性の高いガイドラインが策定されることを切に願っています。

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