観光支援の「応援ムード」一巡をどう乗り越える?秋保温泉から考える被災地のポスト復興戦略

「仙台の奥座敷」として親しまれている宮城県仙台市太白区の秋保温泉が、今まさに大きな転換点を迎えています。2018年に同地を訪れた宿泊者数は88万人を記録しましたが、これは前年の91万人と比較すると3万人ほどの減少となりました。宮城県全体で見ても、2018年の宿泊者数は前年より12万人少ない941万人に留まっており、震災以降続いてきた観光面での勢いに陰りが見え始めています。

秋保温泉旅館組合の佐藤勘三郎組合長は、この状況を「被災した宮城を助けようという観光客の心理が和らいだためではないか」と分析されています。東日本大震災から2019年12月02日現在で約8年半が経過し、被災地を支援しようという、いわゆる「応援消費」の動きが一区切りついたと言えるでしょう。SNS上でも「これからは支援ではなく、純粋に魅力があるから行く場所に変わらなきゃいけない」といった、将来を案じる声が上がっています。

こうした中、現地では「ポスト復興」や「復興の終わりの始め方」といった言葉が現実味を帯びて語られるようになりました。政府が掲げる復興・創生期間の終了まで残り1年4カ月と迫る中、被災地はこれまで受け取ってきた温かな「支援」という追い風が、少しずつ静まっていく気配を敏感に察知しています。ここから先は、自立した地域経営という真の実力が試されるフェーズに突入するのではないでしょうか。

スポンサーリンク

国の支援終了と突きつけられる厳しい現実

宮城県の幹部によれば、震災直後は「10年という区切りであれば何とか頑張れる」という思いで様々な支援策を講じてきたそうです。しかし、復興に向けた歩みを止めていない一方で、高齢化や過疎化、さらには中心商店街の衰退といった、全国の地方自治体が共通して抱える深刻な問題も浮き彫りになってきました。震災の影響だけではなく、複合的な地域課題の解決が同時に求められるという、非常に難しい局面を迎えています。

政府は復興庁の設置期限を2031年3月31日まで延長する方針を固めましたが、宮城県と岩手県への支援については、2026年3月31日をもって完了させるという厳しい期限を提示しました。これに対し、宮城県の村井嘉浩知事は「被災者にとって厳しいメッセージだ」と強く反発しています。ここでいう「ポスト復興」とは、単に震災前の状態に戻ることではなく、支援がなくなった後の新しい社会の形を模索することを指しています。

私自身の視点から見ても、行政による一律の期限設定は、現場の切実な状況と乖離しているように感じられてなりません。復興とは本来、数字や期間で区切れるものではなく、そこに住む人々の暮らしが持続可能なものになって初めて達成されるものです。国が手を引く準備を始める中で、地域がいかにして「自分の足で立つ」ための新しいモデルを構築できるかが、今後10年の明暗を分ける決定打になるはずです。

そんな状況下で、秋保温泉の佐藤組合長はすでに行動を開始しています。2019年10月には自社経営のホテル傘下に旅行会社を設立し、定額制のタクシーで周辺観光地を巡る新サービスを打ち出しました。これは「滞在型」の客だけでなく、地域全体を巡る「回遊型」のニーズを掴むための戦略です。「震災から10年が経ってから後悔しても遅い」という危機感こそが、これからの被災地を救う原動力になるに違いありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました