🚀世界を変えるか?Facebookの仮想通貨「Libra(リブラ)」が突きつける国際送金・決済の未来と規制の壁

2019年6月24日、世界最大のソーシャルメディア企業である米フェイスブック(Facebook)が、独自の仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」を用いた金融サービスの構想を発表し、世界に大きな衝撃を与えました。リブラは2020年上期の運用開始を目指しており、利用者間での送金や日常の買い物での決済に利用できるとしています。この新しいデジタル通貨は、ビットコインなどに代表される従来の暗号資産と同様に分散台帳技術、通称「ブロックチェーン」を活用していますが、その価値が現実世界の資産に裏付けられている点で、既存の法定通貨に近い安定性を持つ設計がなされているのが最大の特徴でしょう。この革新的なプロジェクトについて、専門家たちの見解と、浮上している課題を詳しく解説していきます。

リブラの発行主体は、非営利組織の「リブラ協会」であり、スイスに拠点を置いています。この協会の信用力こそがリブラの信頼性を支える鍵となっており、初期の加盟メンバーには、米マスターカード(Mastercard)や米ビザ(Visa)といった巨大決済企業に加え、米ネットオークション大手のイーベイ(eBay)、音楽配信サービスのスポティファイ(Spotify)、ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)など、業種を超えた約30社・団体が名を連ねています。運用開始時には100社・団体程度の参加を見込んでいることから、国境や業界の垣根を越えた広範なサービス連携が実現し、新しい経済圏が生まれる可能性を秘めていると言えるでしょう。

ブロックチェーン技術のコンサルティングを手掛けるレイヤーXの最高技術責任者(CTO)、榎本悠介氏は、「これほど強力なメンバーが集結して安定通貨を運営する試みは画期的だ」と評価しています。特に、少額送金や日常的な決済手段としてリブラを普及させるためには、圧倒的な利用者数を確保することが不可欠ですが、フェイスブックの巨大なユーザーベースに加え、「参加企業の顔ぶれから見ても、この問題はクリアできると期待できる」との見解を示しています。私も、世界的な影響力を持つ企業群がこのプロジェクトにコミットしている点こそが、リブラの成功を予感させる最大の要因だと考えています。

一方、暗号資産に詳しいアンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合健弁護士は、リブラの性質について「暗号資産の代名詞であるビットコインとは性格が大きく異なり、法定通貨とビットコインの中間に位置するような特性を持つ」と分析されています。ビットコインが「金融資産」としての側面が強いのに対し、リブラは「国際的な少額送金を可能にする決済システム」としての役割を志向している点を指摘しており、その目的が大きく異なっていると言えるでしょう。リブラは、既存の銀行口座を持たない人々、いわゆる「アンバンクト」にも安価で迅速な金融サービスを提供することを目指しており、これが実現すれば世界中の人々の生活を一変させるかもしれません。

日本で唯一、米ドルやユーロといった法定通貨と一定比率で交換できる、価値が「ステーブル(安定)」しているタイプの暗号資産、通称「ステーブルコイン」である「LCNEM Cheque」を発行するLCNEMの木村優社長は、「技術的な目新しさは特段ない」としながらも、「短期間でこれだけのメンバーをまとめ上げた実行力には感服する」と述べています。しかし、「ステーブルコインの観点からは、直ちに脅威とは感じていない」とも語っており、リブラの市場投入に対する期待と冷静な分析が交錯している様子が伺えます。

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各国法制度との整合性という大きな壁

リブラの運用にあたって、専門家が最も懸念しているのが、各国の法制度との整合性をどう確保できるかという点です。例えば、日本における現行法制度では、リブラは安定性を目指す設計とはいえ、法定通貨に対して価格がわずかに変動する可能性があるため、リブラを売買するには、金融庁への登録が必要な「仮想通貨交換事業者」としての資格が必要になります。これは、固定レートの為替として扱えるタイプのステーブルコインとは異なる規制上の取り扱いとなる部分です。さらに、リブラが社債や国債、現金といった現実の資産によって裏付けられる構造を持つため、「国ごとに金融規制上の取り扱いが異なる可能性」があると河合弁護士は指摘しています。フェイスブックには、こうした各国・地域の制度の違いをどのように乗り越え、法的に一貫性のあるサービスを提供できるかが求められるでしょう。

また、国際送金システムとして機能させるためには、万が一、送金事故が発生した場合の責任の所在を明確にする必要があります。具体的には、送金元の国の法律が適用されるのか、受け取り側の国の法律が適用されるのか、そしてリブラ協会がどこまで責任を負うのかといった、国境を越えた取引における責任の分配が大きな問題となります。河合弁護士も、「国境を越えるだけに、責任の分配をどうするのかが問題となる」と指摘しており、国際的な金融取引のルールを再構築する必要性が出てくるでしょう。

さらに、税制との一貫性も大きな課題として浮上しています。日本の税制では、暗号資産は決済のたびに損益を計算して計上する義務があります。リブラはボラティリティー(価格変動の度合い)が低いとは言え、価値は変動する可能性があるため、現状の税制のままでは、少額の決済にリブラを使うたびに損益計算が必要となり、利用者に煩雑な事務作業を強いることになってしまうでしょう。この税制面の整合性の確保は、リブラの普及を左右する重要な鍵となるはずです。

規制当局の厳しいまなざしとSNSの反響

リブラは、その「金融資産」としての側面を極力排除し、国際決済システムとしての機能を追求している結果、既存の円や米ドルといった法定通貨の地位と競合する可能性が出てきました。この巨大な影響力を持つ企業が打ち出す新しい通貨に対して、既に米国やフランスをはじめとする各国から、強い批判や懸念の声が噴出しています。特に規制当局からのけん制は相次いでおり、米下院金融委員会の委員長は2019年6月18日に、「開発の一時停止を求める」との声明を発表し、議会や規制当局による徹底的な精査が必要だと訴えました。この背景には、過去の個人情報流出問題などに起因するフェイスブックの「プライバシー保護に対する不信感」が強く影響していると言えるでしょう。

また、英イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁も、「リブラのようなシステムには、きわめて高い基準の規制が必要になる」と発言しており、世界各国の中央銀行がその動向を注視していることが分かります。SNS上でもこの話題は大きな反響を呼んでおり、「フェイスブックが通貨を発行するなんて恐ろしい」「便利そうだけど、個人情報と結びつくのは怖い」といった、期待と警戒が入り混じった意見が多数投稿されています。フェイスブックが今後、こうした各国の規制当局や、プライバシー保護を懸念する利用者の批判にどう対応し、懸念を払拭していくのか、その動向に世界中の注目が集まっています。私個人としては、既存の金融システムが抱える高コストな国際送金という課題を解決する可能性を秘めているリブラには期待していますが、その圧倒的な影響力ゆえに、世界経済に与えるリスクを考慮した、厳格な規制の下での運用が不可欠であると強く感じています。

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