フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に潜む致命的欠陥とは?経済学者が鳴らす警鐘と金融危機の足音

2019年6月、米フェイスブック社が暗号資産「リブラ」の発行計画を発表し、世界中に衝撃が走りました。しかし、その華々しいデビューの裏側で、各国の規制当局や経済学者からは厳しい視線が注がれています。2019年9月24日には、マーク・ザッカーバーグCEOが日本経済新聞の取材に対し、当初予定していた2020年のサービス開始時期を明言できない状況にまで追い込まれました。

SNS上では「送金が便利になる」と期待する声がある一方で、「個人情報が丸裸にされるのではないか」というプライバシーへの強い懸念も渦巻いています。リブラは、米ドルや円などの主要通貨を組み合わせた「通貨バスケット」に価値を連動させる「ステーブルコイン」を目指していますが、専門家の目にはその設計が極めて危ういものに映っているようです。

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技術者の理想と金融経済学の冷徹な現実

リブラの最大の弱点は、その設計が金融の実務家ではなく技術者の手によるものだという点に集約されます。運営側は、準備資産として国債や預金を100%保有するから安全だと主張しています。しかし、1994年の米国債急落のような歴史を知る者からすれば、これはあまりに楽観的です。もし国債価格が暴落すれば、リブラの裏付け資産は瞬く間に不足してしまいます。

裏付けが足りなくなれば、人々は資産を失う恐怖から一斉に払い戻しを求める「取り付け騒ぎ」を引き起こすでしょう。銀行であれば中央銀行が「最後の貸し手」として救済に入りますが、民間団体に過ぎないリブラ協会には、パニックを鎮めるための無限の資金供給手段がありません。この「出口戦略」の欠如こそ、リブラが抱える致命的な欠陥なのです。

私自身の見解としても、通貨の信用とは単なるアルゴリズムではなく、国家という最後の保証人がいて初めて成立するものです。リブラが目指す「グローバル通貨」という理想は、金融危機の歴史に対する謙虚な学びが欠けていると言わざるを得ません。

途上国を揺るがす「デジタル・ドル化」の脅威

リブラが真に普及を狙っているのは、銀行口座を持たない人々が多い発展途上国です。スマホ一つで送金できる利便性は魅力的ですが、自国通貨がリブラに取って代わられる「デジタル版のドル化」現象は、その国の経済主権を奪い去る諸刃の剣となります。中央銀行が金利を操作して物価を安定させる機能は失われ、経済はリブラの動向に翻弄されることになります。

加えて、自国通貨建てで給与を受け取る労働者や、過去に契約を結んだ銀行は、リブラへの移行に伴う通貨暴落で破滅的な打撃を受ける可能性が高いでしょう。こうしたリスクを各国の規制当局が見逃すはずがなく、2019年10月10日現在の状況を鑑みれば、現行の設計でリブラが日の目を見るハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

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