2019年6月、米巨大IT企業フェイスブックが発表したデジタル通貨「リブラ(Libra)」の計画は、瞬く間に世界中の金融当局と規制当局に大きな波紋を広げています。リブラとは、フェイスブックの持つ世界27億人という圧倒的なユーザー基盤を潜在的な顧客として想定し、国境を越えた個人間の送金やインターネット上での支払いを可能にすることを目指す、ステーブルコインの一種です。ステーブルコインとは、その価値が特定の法定通貨(米ドルなど)や資産に裏付けられることで、暗号資産(仮想通貨)特有の激しい価格変動を抑えることを意図したデジタル通貨のことを指しますので、非常に実用性が高いと期待されているのでしょう。
しかし、この革新的なデジタル通貨に対し、各国の金融当局からは強い懸念の声が噴出しています。主要国の金融当局で組織される金融安定理事会(FSB)のトップは、2019年6月25日、各国首脳へ向けて、リブラのようなデジタル通貨計画に対して厳重な審査と規制を求める書簡を送ったことを明らかにしました。この動きは、2019年6月28日から29日にかけて大阪で開催される**20カ国・地域首脳会議(G20サミット)**においても、リブラに関する議論が重要な議題の一つになる可能性を示唆しています。
FSBの議長を務めるクオールズ氏は、G20首脳宛ての書簡を公表し、「もしリブラが小口決済の用途で幅広く使われることになれば、当局が厳密に審査し、非常に高い基準の規制に従わせる強い根拠となる」との見解を表明されています。同氏は米連邦準備理事会(FRB)の副議長も兼任する金融規制の専門家として知られており、その発言の重みは計り知れません。現時点では暗号資産(仮想通貨)自体が世界の金融安定にとって即座のリスクではないとしつつも、「規制当局の権限の隙間や、国際的な基準が欠如する空白が生じかねない」と強く懸念を示していらっしゃいます。FSBと関係する基準策定機関は、これらのリスクを厳重に監視し、必要であれば追加的な対応策を検討していく方針を強調しています。
リブラの登場は、既存の金融システムを根底から揺るがす「新たな難問」を提起するとの警鐘が鳴らされています。主要国・地域の中央銀行が加盟する**国際決済銀行(BIS)**は、FSBの書簡が送られる直前の2019年6月23日、巨大なIT企業が提供する金融サービスがもたらす影響に関するリポートを公表したばかりです。豊富なデータと広大な利用者層を持つIT企業が決済や融資といった金融分野に進出することで、金融界に急速な変化がもたらされる可能性があると指摘されており、リブラはその典型例と言えるでしょう。
特にイギリスでは、金融規制当局である金融行為監督機構(FCA)が、2019年6月25日時点で、フェイスブックの計画を精査するため、英財務省やイングランド銀行(中央銀行)と連携して動いていることを認めました。ベイリー長官は、「我々は国内外のレベルでフェイスブックとその組織(リブラ)と深く関与していかなければなりません。それがなければ、フェイスブックなどが安易に承認を得ることはないでしょう」と、厳格な姿勢を示されました。リブラが抱える資金洗浄(マネーロンダリング)防止や消費者保護の観点から、従来の金融機関と同様の厳格な規制を課すべきだという指摘は、各国で非常に多く見受けられます。
ソーシャルメディア上でも、リブラのニュースは大きな反響を呼んでいます。「27億人規模のデジタル通貨は、もはや一国の通貨と同じかそれ以上の影響力を持つのではないか」「既存の金融システムが時代遅れになるのでは」といった驚きと期待の声がある一方で、「個人情報の取り扱いが懸念されるフェイスブックに、お金の管理まで任せて大丈夫なのか」「規制がないまま巨大化するのは危険だ」といった不安や懐疑的な意見も多く見られます。これは、リブラが単なる新しい決済手段ではなく、金融のあり方そのものを変えてしまう可能性を秘めていることの裏返しだと言えるでしょう。世界的なデジタル通貨の未来を占う上で、G20での議論の行方から目が離せない状況です。
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