2019年6月27日、メキシコ政府が国営石油会社**ペメックス(Pemex)**の救済に固執する姿勢が、国家財政に深刻な影を落とし、国際的な懸念を増幅させています。巨額な減税措置による税収不足への拍車に加え、ガソリン増産を目的とした精製施設の新規投資が当初計画を上回る規模になるとの見通しが強く、財政悪化への不安が高まっている状況です。すでにペメックスの社債格付けは「投機的水準」まで引き下げられており、その財政負担が最終的にメキシコ国債の格下げという国家的な危機を招くのではないかと危惧されています。
ペメックスの長期債務格付けは、大手格付け会社フィッチ・レーティングスによって「トリプルBマイナス」から、リスクの高い「ダブルBプラス」へ、つまり「投資適格級」から**「投機的水準(ジャンク債)」**へと引き下げられました。これは、今後の債務不履行(デフォルト)の可能性が相対的に高まったことを意味します。フィッチは、その理由として「不十分な設備投資によって、原油産出量や将来の採掘可能量も減少が続いている」と指摘しており、これはロペスオブラドール政権が移民問題で米国トランプ政権からの追加関税という混乱に対応する最中に降りかかった、メキシコ経済への新たな衝撃となりました。
2018年12月の新政権発足から半年が経過しても、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール大統領はペメックスの救済に心血を注いでいます。具体的には、大規模な減税を含む財政支援に加え、大型の石油精製施設の建設も推し進めていますが、肝心の原油生産量は低迷を続けているのが現状です。2019年4月の生産量は前年同月比で1割以上も減少。さらに、2019年1月~3月期決算では、売上高が前年同期比10パーセント減少し、最終損益も357億ペソ(日本円で約2030億円)という巨額の赤字を計上しています。
では、なぜペメックスはこれほどまでに苦境に立たされているのでしょうか。実は、本業の儲けを示す営業損益の段階では黒字を維持しています。しかし、その黒字を上回る重い法人税や石油関連の税金が課せられていることが、最終赤字の大きな要因となっているのです。さらに、2019年3月末時点で2兆ペソを超える有利子負債を抱えており、これに伴う利払い負担も経営を強く圧迫しています。1月~3月期における利払い負担は298億ペソにも上り、営業利益607億ペソのほぼ半分が、この利払いで消えてしまっている構図が見て取れます。つまり、過重な税負担と莫大な有利子負債という二重苦が、同社の資金繰りを窮迫させ、本来必要な設備投資が滞ることで、結果的に原油生産が落ち込むという悪循環に陥っているのです。
メキシコ政府の「抜本改革」なき救済への懸念
ロペスオブラドール大統領は、この経営不振を「これまでの政権の失政と汚職が原因」であると断じ、一過性の減税措置を講じるに留めています。残念ながら、根本的な問題である「重い税負担」や「巨額有利子負債」の構造に踏み込み、抜本的な経営改革を行う気配は今のところ見えません。原油増産に不可欠とされる、民間企業との油田共同開発案件までもがストップしている状態です。これは、資金不足→投資不足→生産(売上高)減少→赤字という負のスパイラルを断ち切るどころか、固定化させてしまうでしょう。長期的な視点に立った構造改革こそが、国営企業であるペメックスには不可欠であると、私は考えます。
政権がペメックス救済に固執すればするほど、その重荷は国家財政へと及び、共倒れの危機が迫っています。景気減速で税収不足が懸念される中での「付け焼き刃的」とも言える減税措置は、国家財政にとって大きな打撃となりますし、巨額な予算を要する大型精油施設の建設への政府予算投入も、さらなる負担となるでしょう。新政権は、ペメックスが自立できる体質への改善よりも、政府主導による事業拡大を優先しているように見受けられ、この方針には大きな疑問符がつきます。
実際、格付け会社はすでにメキシコ政府の財政健全性にも警鐘を鳴らし始めています。フィッチ・レーティングスはペメックスの格下げに先立つ2019年6月上旬、メキシコの長期債務格付けを「トリプルBプラス」から「トリプルB」に一段階引き下げました。また、米格付け会社ムーディーズ・インベスター・サービスも、メキシコ国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更しています。このままメキシコ政府がペメックスへの財政支援を続ければ、国債のさらなる格下げは避けられず、国家財政そのものが信用を失いかねない瀬戸際に立たされていると言えるでしょう。
この事態に対し、SNS上でも「ペメックスは国のATMではない」「構造的な問題を放置して、国民の税金を投入するのはおかしい」といった、政府の対応に対する批判的な意見が多数見受けられます。新政権の救済策が、一時の延命に終わることなく、メキシコ経済の長期的な安定につながるよう、今後の動向を注視していく必要があります。
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