2019年6月27日、韓国の通信業界は、中国の通信機器大手である**華為技術(ファーウェイ)の設備利用をめぐって、深刻な危機感に苛まれています。地元メディアの報道によりますと、韓国を代表する移動通信3社は、現在の主流規格である「4G」の設備として、合計で約5,000億ウォン(日本円で約460億円)もの大規模な取引をファーウェイと行ってきました。さらに、このうち1社は、次世代通信の「5G」**規格においても、すでにファーウェイの機器を採用している状況です。
この状況下、もし米国政府が韓国に対し、ファーウェイ製品への制裁措置への参加を正式に要求した場合、韓国の通信各社は、これまで構築してきた通信インフラを根底から見直し、大々的な更新を迫られる**「Xデー」**の到来を覚悟しなければなりません。韓国の大手移動通信会社の幹部は、「日本の通信大手が4G設備をファーウェイ製から他社製に切り替える際、どれほどの費用を投じたのか」といった情報収集に奔走しており、その緊張の高さがうかがえます。
「Xデー」とは、米国が韓国に対してファーウェイの通信機器の使用停止を明確に要求し、韓国の大手通信3社が**「米国か、それとも中国か」**という究極の選択を迫られる瞬間を指します。米中間の貿易摩擦が激化の一途をたどるなか、米国はすでにファーウェイ製品を事実上、自国から排除する制裁を発動。日本や欧州をはじめとする同盟国や友好国にも同様の措置を求めています。しかし、これまで韓国に対しては、「制裁への参加」を公に要請する行動は控えてきました。
なぜ米国は韓国に対し、これまで公式な圧力を控えてきたのでしょうか。その背景には、2017年の在韓米軍への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD/サード)の配備をめぐる、苦い経験への配慮があると考えられます。当時、韓国が米国側についたことで、中国からの報復措置を受け、約8兆ウォンもの経済的打撃を被った過去があるからです。このため、韓国経済界の一部では、春先までは「米国は韓国の対中関係の特殊性を理解しているから、強硬な態度には出ないだろう」という楽観論さえあり、韓国が4月に世界で初めて「5G」サービスの提供を開始した際も、米国は静観の姿勢、いわゆる「黙認」をしていたとみられます。
特に5Gサービスにおいては、通信業界3位のLGユープラスがファーウェイの基地局を採用しています。しかし、2019年5月下旬に入ると、事態の風向きが変わり始めました。韓国の有力紙である朝鮮日報が、米国務省が韓国外務省に対し、5Gにおいてファーウェイ製の基地局を使用しないよう求めたと報じたのです。さらに6月5日には、ハリー・ハリス駐韓米大使がソウルでの講演で、名指しは避けつつも「5Gの導入においては、セキュリティーの観点から信頼できる業者を選ぶことが重要だ」と強調しました。これは、ファーウェイ、そして同社の基地局を採用したLGユープラスを明確に牽制する発言であったと解釈されています。
そして、朝鮮日報は6月18日付の記事で、通信業界首位のSKテレコム、2位のKT、そしてLGユープラスを含む大手3社すべてが、2014年以降にファーウェイと通信設備の中期購買契約を結んでいたという衝撃的な事実を報じました。契約金額は、SKテレコムが関連会社と合わせて約1,500億ウォン、KTが2,000億ウォン、LGユープラスが1,500億ウォンに上ります。これらの設備は、主に基地局から通信網の背骨にあたる基幹網までをつなぐ光ファイバー回線の部品などとされています。
報道を受け、SKテレコムは「契約の詳細は回答できない」としつつも、「セキュリティー上の問題になることはない」と火消しに努めています。しかし、通信業界内部からは「基幹網にファーウェイの部品が組み込まれているということは、韓国全体のインターネットトラフィック(情報通信量)が、ファーウェイの部品を経由する可能性が高いことを意味するのではないか」という懸念の声が上がっています。セキュリティーとは、通信システムやデータが、権限のないアクセスや改ざん、破壊から保護されている状態を指します。
ハリス駐韓米大使は、6月5日の講演後にも韓国大統領府の高官と非公式に会談し、「ファーウェイ製品を使い続けるのであれば、機密情報の共有ができなくなる」と警告したとも報じられています。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、月末にソウルでトランプ米大統領との首脳会談を控えており、会談の場で米側から具体的な対応を求められた場合、米国か中国かという、極めて困難な二者択一を強いられることになります。これは、韓国政府にとっても、まさに国家の命運を分ける**「踏み絵」**となるでしょう。
一方で、ファーウェイの韓国法人によりますと、同社は2018年に前年比約2倍となる106億ドル(日本円で約1兆1,000億円)相当の部品を、主に半導体を中心に韓国企業から調達しています。これは、ファーウェイが韓国経済において無視できない巨大な取引相手であることを示しています。こうした背景には、中国政府の存在が見え隠れしており、このファーウェイ問題は、韓国にとって「第2のTHAAD問題」(中央日報)となり、米中間の地政学的対立の新たな火種となるのではないかとの懸念が、日増しに高まっている状況です。
私見を述べさせていただきますと、韓国の通信業界が抱えるこのジレンマは、現代のデジタル化された世界において、一国の通信インフラが単なる技術的な問題ではなく、国家安全保障と経済的利益が複雑に絡み合う、極めて重要な問題であることを浮き彫りにしています。ファーウェイの機器は、その性能とコストパフォーマンスの高さから世界的に普及していますが、その背後にある中国政府の影響力をどう評価するかは、同盟国としての米国の信頼と、最大の貿易相手国である中国との関係を天秤にかけることにほかなりません。韓国がどのような決断を下すのか、国際社会全体が固唾をのんで見守っている状況でしょう。
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