日本の大手企業において、一部の優秀な学生を対象に「年収1000万円」という破格の条件で迎え入れる動きが加速しています。これまで横並びが美徳とされてきた日本型の人事制度が、ついに欧米のような実力主義へと舵を切るのではないかと期待する声も少なくありません。しかし、この大胆な試みがすべての企業で成功するとは限らないのが現実でしょう。
雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は、この採用手法の成否は「企業群によって明確に分かれる」と分析されています。なかでも注目すべきは、これまで学生からの人気獲得に苦戦してきた外食チェーンなどの業界です。SNS上では「現場を知らないエリートが上司になるのか」といった不安の声がある一方で、「外食のイメージが変わる」というポジティブな期待も寄せられています。
現場主義からの脱却と「ヘッドクオーター人材」の必要性
従来の外食産業では、新卒で入社した社員に対して5年から10年という長期の店舗勤務を課すのが通例でした。これは現場のプロを育てる上では合理的ですが、一方でマーケティングや商品開発、販売戦略といった経営の中核を担う「ヘッドクオーター(本社・本部)人材」の育成を阻む要因にもなっていたのです。
現場でのキャリアが長すぎると、戦略的な視点を持つ優秀な層が応募すらしてくれないという課題に直面します。その結果、多くの企業は中途採用や外部コンサルタントに依存せざるを得ませんでした。しかし、2019年11月12日現在の状況を鑑みると、自社の特色を深く理解し、機密保持も徹底できる「生え抜きの司令塔」を育てることは急務といえます。
グローバルかつハイテクな舞台が学生を魅了する
超高額年収を提示する採用枠は、従来の現場採用とは完全に切り離された特別なキャリアパスとして機能します。これにより、これまで外食業界を敬遠していた層にも強力にアピールできるでしょう。現場経験をあえて短期間に設定し、早期に内勤の企画職へと登用する流れを明確に打ち出すことが、優秀な若者を惹きつける鍵となります。
現在の外食産業は、食材のグローバルな調達や、ITを活用した省力化、さらには多国籍なスタッフの管理など、非常に高度なスキルが求められるフィールドです。私は、知名度だけの「エクセレント・カンパニー」よりも、こうした刺激的で高報酬な環境を選ぶ学生が増えるのは自然な流れだと考えています。外食業界が「きつい現場」の象徴から、「戦略的なエリート集団」へと変貌を遂げる日は近いかもしれません。
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