生命の設計図を自由自在に書き換えることができる「ゲノム編集」という画期的な技術が、今まさに大きな岐路に立たされています。政府は、この技術をヒトの受精卵に応用する臨床研究や医療提供を制限するための新法について、2020年の通常国会への提出を見送る方針を固めました。
「ゲノム編集」とは、細胞内のDNAを特定の場所で切断し、遺伝子を削除したり新しい配列を組み込んだりする最新のバイオテクノロジーです。従来の遺伝子組み換えよりも圧倒的に精度が高く、効率的であることから、医療分野での活用に大きな期待が寄せられているのです。
議論の難航と優先順位の壁
2019年12月18日に開催された内閣府の生命倫理専門調査会において、厚生労働省の担当者からこの方針が示されました。法制化に向けた議論は2019年夏からスタートしていましたが、規制の細かい定義や枠組みを決定するための作業に、予想以上の時間を要しているのが現状です。
また、次期国会には他にも重要な法案が山積しており、ゲノム編集に関する法整備の優先度が相対的に低いとみなされたことも背景にあります。SNS上では「万が一の事故が起きてからでは遅い」「生命の根源に関わる問題なのに、後回しにするのは危険だ」といった懸念の声が相次いでいます。
厚労省の専門家委員会は2019年12月04日の時点で、法的規制の必要性については大筋で合意していました。しかし、同年12月18日に提示された中間案では「実効性を担保できる枠組みが必要」という抽象的な表現に留まり、具体的な罰則規定の明記は見送られる形となりました。
問われる倫理観と日本の役割
この問題が世界的に注目されるきっかけとなったのは、2018年に中国の研究者が発表した衝撃的な報告でした。ゲノム編集を施した双子の赤ちゃんを世界で初めて誕生させたというニュースは、人類の未来を左右しかねない「デザイナーベビー」への懸念として世界中に波及したのです。
不妊治療が非常に盛んな日本においても、この技術がなし崩し的に利用されることを防ぐための防波堤が必要不可欠でしょう。私個人の意見としては、科学の進歩を止めるべきではありませんが、一度書き換えられた遺伝子は次世代へと受け継がれるため、拙速な適用は慎むべきだと考えます。
技術の進化は日進月歩ですが、法整備がそれに追いついていない現状には強い危機感を抱かざるを得ません。2019年末のこの判断が、将来の日本における生命倫理のあり方にどのような影を落とすのか、私たちはこれからも厳しい視線で議論の行方を見守り続ける必要があるでしょう。
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